タイトル |
ニホンミツバチとトウヨウミツバチの系統遺伝学的関係の解明 |
担当機関 |
畜産試験場 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
ニホンミツバチのミトコンドリアDNAの数領域をPCR法で増幅し、増幅したDNAを解析することで、ニホンミツバチの遺伝的多様性を解析したところ、ニホンミツバチは遺伝的にかなり均一であった。
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背景・ねらい |
トウヨウミツバチ(Apis cerana)の亜種であるニホンミツバチ(Apis cerana japonica )は、セイヨウミツバチにない特性(低温飛翔性、抗ダニ性、抗病性等)を持つため、将来の遺伝資源として注目を浴びている。しかし、この種の遺伝的同定は立ち後れており、特にこの亜種内の遺伝的多様性の検討はほとんどなされてこなかった。ミトコンドリアDNAを解析することでニホンミツバチ内の遺伝的多様性を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- PCR法でmtDNAの5つの領域を増幅し、それらの増幅産物を9種の制限酵素の切断パターンを比較したところ、対馬を除くと2例(CO-II-tRNALeuをAluIで処理した場合とL-rRNAをEcoRVで処理した場合)を除いてニホンミツバチ亜種内では多型を示さなかった(表1)。対馬の切断パターンは韓国のものとほぼ同じであった。
- PCRで増幅したmtDNA領域のうち、CO-IIとtRNALeuの間のintergene領域の塩基配列を求めたところ、この領域の大きさはセイヨウミツバチでは400bpであるのに対し、トウヨウミツバチでは約70bpと短かった。
- CO-IIとtRNALeuの間のintergene領域を含んだ約500bpをニホンミツバチ亜種内で比較したところ、対馬を除く15地域で塩基配列は全く同一であった。対馬はそれ以外の日本のものと2塩基異なっていた。韓国も同様に2塩基異なっていたが、異なっていたサイトは対馬とは違っていた。既報の塩基配列とともにCOIIの最初の300bpを用いてNJ法で系統樹を作成した(図1)。その結果、ニホンミツバチ(対馬のものを含む)は韓国のミツバチとクラスターを形成した。
- 以上の結果から、ニホンミツバチは、その他のトウヨウミツバチと分かれた別の亜種であるというより、むしろ韓国のトウヨウミツバチと同じグループに属すると考えるべきである。また他の地域のトウヨウミツバチと比較してニホンミツバチに遺伝的多型がほとんどなかったことから、ニホンミツバチは過去にトウヨウミツバチが日本に侵入したおり遺伝的多様性を失ったと考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
以上の結果は、遺伝資源としてのニホンミツバチを検討するための基礎的データとして有効である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
遺伝資源
ミツバチ
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