牛胎子の心電位を測定・解析する技術

タイトル 牛胎子の心電位を測定・解析する技術
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 1999~2001
研究担当者 干川愛
金山佳奈子
根本鉄
作本亮介
小林登史夫
斉藤則夫
石田剛
陳文西
渡邊康子
粕谷悦子
壁谷昌彦
本田善文
齋藤敏之
発行年度 2001
要約 ホルスタイン妊娠牛の右側腹部にマルチチャンネル電極を装着することにより、胎子の心臓から発生する律動的な電位変化を記録できる。また、この電位変化の中で最も大きい波(R波相当成分)が発生する間隔を解析して、胎子心臓の自律神経活動変化を推測することが可能である。
キーワード 牛、母体、胎子、心電位、自律神経
背景・ねらい 妊娠初期から出産期までの牛母体と胎子のモニタリングは、流産の早期発見と予防、胎子の成長過程、早産を把握するために重要である。特に、妊娠100日目以降は超音波映像による胎子の状態を計測することが困難となる。心臓は血液循環の中心であり、その心電図は牛胎子の状態を把握する上で有用である。これまで牛胎子心電位の検出法や信号処理・解析法が開発されていないため、本研究ではこれらの手法を開発することを目的とした。
成果の内容・特徴
  • ホルスタイン妊娠牛12頭(AI胎子、137~224日齢)を用いた。母体の右側腹部に約12cm間隔で体表面電極9個を装着して胎子の心電位を検出した(図1)。また、母体の心電位は胸部に貼り付けた表面電極で導出した。
  • 1の方法により母体心電位と胎子の心臓由来と考えられる電位変化がそれぞれ導出された(図2)。母体の心電図にはわずかながら胎子由来と考えられる電位が混入した。導出された電位に電気雑音が混入することがあったが、基線上に現れる軽微な電気雑音や基線のゆらぎはデジタルフィルタやベッセルフィルタを用いることにより除去された。得られた胎子由来の心電図RーR間隔から分時心拍数を算出したところ、胎子の分時心拍数は一定せず、揺らいでいることが示された(図3)。
  • 卵丘細胞由来クローン胎子を妊娠したホルスタイン雌牛6頭(胎子、150~221日齢)を用いて同様に心電位を検出した。図4には、221日齢の胎子心電位と母体心電位の記録例を示した。クローン胎子由来の心拍数は母体(60~80拍/分)の1.5倍~2倍であった。また、母体の心電位のR-R間隔は800~900ミリ秒の間で推移した。
  • 3で記録された母体心電位データのウェブレット解析から、心臓副交感神経活動を強く反映すると考えられる0.2~0.3Hzの周波数帯域(HF成分)のパワーが周期的に高まることが示された(図5)。一方、胎子心電位HF成分のパワー変化は母体心電位のそれとは必ずしも同調しなかった(図6)。
  • 成果の活用面・留意点
    1. 本研究で用いた計測・解析法は牛胎子モニタリング法の素材技術として活用できるが、心電位の検出状態を改善するために、胎子の位置を検出できる技術の開発が必要である。
    2. 牛舎で母体と胎子の心電位を計測する際には建物の電気的な接地状態をあらかじめ確認する。
    3. 立位での心電位計測では牛を長時間静止させることがむずかしいため、長時間計測する場合には横臥状態で行うことが望ましい。
    4. 心電位R-R間隔の揺らぎからクローン胎子の状態を推測するためには、さらにデータを蓄積する必要がある。
    カテゴリ モニタリング

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