タイトル |
ダッタンソバの各種放射線による変異誘発効果 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2001~2005 |
研究担当者 |
山口博康
鹿園直哉
出花幸之介
森下敏和
長谷純宏
田中淳
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発行年度 |
2001 |
要約 |
ガンマ線およびイオンビームなど放射線の種類によりダッタンソバの生存率および変異率等への効果が異なること、効率的な放射線育種のための適正線量が異なることが明らかとなった。
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キーワード |
ダッタンソバ、ガンマ線、イオンビーム、線量反応、突然変異
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背景・ねらい |
ダッタンソバは機能性が高く健康食品の素材として注目され新品種の開発が望まれている。突然変異育種は短期間で目的とする形質のみを改良できる利点があり、突然変異育種法が開発されることで品種育成が促進される。これまで突然変異育種はガンマ線やX線を主に用いていたが、近年植物に照射できるイオンビームが開発されガンマ線よりも線エネルギー付与(LET)、生物学的効果比(RBE)が高いことから新規変異原として注目されている。そこでダッタンソバを材料にガンマ線とイオンビームの線量反応、変異誘発効果などの生物学的効果について比較検討した。
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成果の内容・特徴 |
用いたイオンビームを示した(表1)。 照射による影響はガンマ線が最も小さく、炭素イオンが最も大きかった(図1、表2)。 炭素イオンの透過深度は約1㎜であり、照射の効果が果皮の有無に大きく影響されることが示された(表1、表2)。 ヘリウムのイオンの透過深度は約6㎜であり果皮の影響が小さいことが示された(表1、表2)。 各品種のM2の変異率はガンマ線の線量とともに高くなったが(表3)、400Gy以上のガンマ線の処理は変異率は高いが、枯死および不稔等も多いため、効率的に変異体を得るには300Gy付近の処理が適正であると考えられた。 イオンビームもガンマ線同様、変異率は線量が増加するに連れて増加したが(表4)、線量の上昇とともに枯死等が多発した。特に炭素イオンは影響が大きく、効率的に変異体を得るには20~40Gy照射が適正線量と推測された。 ネオンイオンの葉緑体変異率は低かった(表5)。 イオンビームもガンマ線同様、ダッタンソバに変異誘発効果を有すること、線種により線量反応、変異の種類および変異率の異なることが明らかになった。 ガンマ線照射により得られた一部の変異体についてRAPD-PCRによる分析を行った結果、数種のプライマーについて原品種との間に多型が確認された。
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成果の活用面・留意点 |
- ガンマ線、イオンビームとも線量が高くなると変異率は上昇するが、線量を高くしすぎると枯死および不稔等が多発することに留意する必要がある。
- イオンビームは透過深度が浅いため種子の大きさ、状態について留意する必要がある。
- ダッタンソバのみでなく、これまで育種例の少ない作物についてもガンマ線およびイオンビームを用いた突然変異育種が盛んになる。
- 今後各種作物において、ガンマ線およびイオンビームにより誘発された変異体が新規育種素材あるいは変異遺伝子の解析の素材となりうる。
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カテゴリ |
育種
機能性
新品種
そば
品種
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