DNAマーカーアシスト導入法による高肉質豚の作出

タイトル DNAマーカーアシスト導入法による高肉質豚の作出
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2002~2006
研究担当者 林武司
美川智
粟田崇
堀内篤
井手華子(静岡県・中小畜試)
金谷奈保恵(STAFF研)
発行年度 2006
要約 金華豚とデュロック種の交雑家系におけるQTL解析により肉の柔らかさに関与するQTLが検出され、金華豚由来の対立遺伝子が肉をより柔らかくする効果を持つことが認められた。このQTL領域を対象として、連続的な戻し交配とDNAマーカーによる個体選抜にもとづくマーカーアシスト導入法により、金華豚型のゲノムをデュロック種に導入して高肉質の豚を作出した。
キーワード
QTL解析、剪断力価、金華豚、マーカーアシスト導入法
背景・ねらい 金華豚は小型で肉量は少ないが、筋肉内脂肪に富んだ歯切れの良い柔らかい肉質が特徴である。一方、デュロック種は大型で肉量が多く、肉豚生産のための雄親として活用されているが、その肉質については個体間の差異が大きく、改良の余地が残されている。我々は金華豚とデュロック種の交雑実験家系を構築し、肉質関連形質についてQTL解析を行なった。その結果、肉の柔らかさに関与するQTLが検出され、そのQTLでは金華豚由来の対立遺伝子(金華豚型アリル)に肉を柔らかくする効果が認められた。そこで、このQTLに注目して、連続的な戻し交配とQTL領域のDNAマーカー情報を用いたマーカーアシスト導入法により、金華豚型アリルのデュロック種への導入を試みた。
成果の内容・特徴
  1. 金華豚とデュロック種の交雑F2家系におけるQTL解析でブタ第2染色体に肉の柔らかさを示す剪断力価に関与するQTLが検出され、金華豚型アリルがより肉を柔らかくする効果を示した(図1)。
  2. マーカーアシスト導入法により、金華豚とデュロック種の交雑F1個体をもとに、デュロック種への戻し交配(back cross, BC)を3回繰り返してBC3個体を得た。そのさいに、QTL領域のマーカー遺伝子型をもとにQTLにおいて金華豚型アリルを持つ個体を選抜し、その個体のみをデュロック種への戻し交配に用いた。BC3個体についてもマーカー遺伝子型をもとに金華豚型アリルを持つ個体を選抜し、その個体間の交配によりBC3F2個体を作出した(図2)。
  3. 作出されたBC3F2個体においては、導入対象としたQTL領域以外のゲノム領域は、ほぼデュロック型のゲノムとなっていた。
  4. BC3F2個体については、目的としたQTL領域が金華豚型のホモ個体(JJ型)、金華豚型とデュロック型のヘテロ個体(JD型)、デュロック型のホモ個体(DD型)にタイプ分けして形質調査を行なったところ、剪断力価の低い順にJJ型、JD型、DD型となり、QTLにおいて金華豚型アリルを持つ個体は持たない個体よりも肉の柔らかさが有意に増大した(図3)。肉量についてはQTLの遺伝子型による有意な違いは見られなかった。
成果の活用面・留意点
  1. 対象としたQTLにおいて金華豚型アリルをホモに持つBC3F2個体(JJ型)は、肉量の多いデュロックの特徴と優良な肉質を備えており経済的価値が高い。今後は、肉豚生産のための種豚としての利用を図る。
  2. 肉の柔らかさに関与するQTLの原因となる遺伝子の探索を行なう。
カテゴリ DNAマーカー

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