タイトル | 日本のイネを特徴づけるゲノム多型領域のモザイク構造 |
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担当機関 | 上席研究官 |
研究期間 | 2004~2004 |
研究担当者 |
田淵宏朗 林 敬子 吉田 均 芦川育夫 佐藤洋一郎(地球研) |
発行年度 | 2004 |
要約 | DNA塩基配列の比較及びRFLP(制限酵素断片長多型)解析で検出される、ジャポニカイネ系統間で異なるゲノム領域は多くの先祖に由来する遺伝子型により構成されている。一方、日本のイネ品種間では主に2種類の遺伝子型からなるモザイク状の構造を示す。 |
キーワード | イネ、ゲノム、塩基配列、RFLP、遺伝子型、ジャポニカ |
背景・ねらい | 日本のイネにおける有用遺伝子のQTL(量的形質遺伝子座)解析・効率的な育種選抜や品種識別に必要なDNAマーカーの作出等を行う際に、ゲノム情報を得ておくことは重要である。また、日本のイネは中国・朝鮮半島から渡来した可能性が高く、これらの地域のジャポニカ在来種とゲノム多型領域(イネ系統・品種間で2種類以上の遺伝子型が検出される領域)を比較することで、日本のイネの起源が推測される可能性がある。近年、イネゲノムプロジェクトの成果として日本晴ゲノムDNAの塩基配列の解明・RFLPマーカーの整備が完了し、塩基配列レベルでのゲノム構造の比較・解析が容易となった。これらの背景から、日本のイネ品種間でのゲノム多型領域の遺伝子型が、何種類の先祖から由来しどのように組み合わされているのかを明らかにすることにより、基礎的なゲノム情報を提供する。 |
成果の内容・特徴 | 1. できるだけ日本のイネ品種間で異なる遺伝子型が検出されるように、各染色体5ヵ所以上、全体で67ヶ所のゲノム領域(塩基配列の決定・比較を23領域合計6474bp(塩基対)、RFLP解析を44領域)を選定する。各ゲノム領域における、25品種の日本のイネ、各16系統の中国・朝鮮半島の在来種、合計57系統のジャポニカイネの遺伝子型を図1に示す。 2. 系統間の遺伝子型の非類似度に基づき遺伝的距離を計算し、群平均法により樹形図を作成すると、ジャポニカイネは遺伝的距離が遠い2グループに分けられる。日本のイネ品種群は一方のグループ中のさらに1サブグループに全て含まれているが、一部の中国・朝鮮半島の在来種と同じ遺伝子型を示す多型領域が多くあり、共通の先祖に由来する可能性が示唆される(図1)。 3. 今回供試したジャポニカイネでは、57ヵ所のゲノム多型領域のうち38ヵ所(66.7%)で3種類以上の遺伝子型が検出され、遺伝子型の最大値は9種類であり、各々の多型領域が多くの先祖に由来する遺伝子型により構成されている。一方、日本のイネでは48ヵ所の多型領域のうち42ヵ所(87.5%)において2種類の遺伝子型しか検出されず、各々の多型領域は主に2種類の先祖に由来する遺伝子型からなるモザイク状の構造を示す(図1、表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究で用いた日本のイネは、主に明治以降に選抜または育成された水稲であり、それ以外については別途研究が必要である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 育種 水稲 DNAマーカー 品種 |