タイトル |
ETO1タンパク質による植物のエチレン生合成系酵素の転写後制御機構 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2000~2006 |
研究担当者 |
C.-M.(台湾植物微生物学研究所)
C.(ペンシルベニア大)
J.R.(ソーク研究所)
K.L.-C.(台湾植物微生物学研究所)
Chang
Ecker
Lurin
Wang
永田雅靖(野茶研)
吉田均
森浩一
内田英史
齋藤浩二(北農研)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
ETO1タンパク質は、エチレンの前駆体を合成するACC合成酵素のうち、カルボキシル末端に特異的なTOE配列を持つ一群に結合し、酵素活性を阻害するとともにプロテアソーム依存的分解を促進することによって、エチレン生合成を抑制する。
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キーワード |
エチレン、生合成、ACC合成酵素、タンパク質間相互作用、プロテアソーム
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背景・ねらい |
エチレンは果実の成熟や病原菌感染応答などの形質を制御する重要な要素のひとつであり、エチレンの前駆体である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)の合成反応がエチレン生合成の律速段階となっている。この反応を触媒するACC合成酵素は、遺伝子の転写時だけでなく、その転写後においても制御を受けるが、その詳細は不明である。そこで、分子遺伝学および生化学的手法によりACC合成酵素遺伝子の転写後制御機構を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- シロイヌナズナのethylene-overproducer1 (eto1)変異体の解析によって同定されたETO1タンパク質は、BTB、TPR、CCというタンパク質間相互作用ドメインで構成される(図1A)。ETO1の相同遺伝子はイネ、トマトをはじめとする多くの植物に存在するが、動物や微生物には見出されない。
- ETO1はTPRドメインを介して、シロイヌナズナのACS5などのタイプ2 ACC合成酵素のカルボキシル末端(C末端)に結合する(図1B)。また、ETO1はアミノ末端(N末端)側のBTBドメインを介して、E3ユビキチンリガーゼの構成因子のひとつであるCUL3に結合する(図1C)。
- ETO1はシロイヌナズナのACS5の酵素活性を阻害するが、この阻害反応にはACS5のC末端が必要である(図2)。
- ETO1の結合部位であるタイプ2 ACC合成酵素のC末端領域(target of ETO1; TOE配列)をGFPタンパク質に融合させると、ETO1およびプロテアソームの働きによってGFPが分解される(図3)。
- ETO1過剰発現トマトをオーキシンで処理すると、タイプ2 ACC合成酵素をコードするLE-ACS3遺伝子の転写が野生型と同等に誘導されるにもかかわらず、エチレン生合成は野生型に比べて抑制される(図4)。これは、ETO1が転写以降の段階でACC合成酵素の活性を抑制することを示している。
- 以上の結果より、ETO1はACC合成酵素の活性阻害とプロテアソーム依存的分解の2つのメカニズムによって、エチレン生合成を抑制する。
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成果の活用面・留意点 |
- タイプ2 ACC合成酵素によるエチレン生合成を介したストレス耐性等の研究に広く基礎情報として活用できる。
- TOE配列は、標的タンパク質に付加することによってその分解を促すと考えられるため、不要時には外来タンパク質を分解させ、必要時には分解を解除するためのシグナルとしての応用が期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
トマト
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