イネ高温登熟によってデンプン代謝等様々な遺伝子の発現が影響をうける

タイトル イネ高温登熟によってデンプン代謝等様々な遺伝子の発現が影響をうける
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2006~2007
研究担当者 黒田昌治
山口武志
山川博幹
廣瀬竜郎
発行年度 2007
要約  イネ乳熟期の高温は、胚乳の白濁化とともに、登熟穎果においてデンプン粒結合型デンプン合成酵素遺伝子、デンプン分枝酵素遺伝子、細胞質型ピルビン酸リン酸ジキナーゼ遺伝子の発現低下およびアミラーゼ遺伝子の発現誘導を引き起こす。
キーワード イネ、高温登熟、遺伝子発現、デンプン代謝、乳白粒
背景・ねらい  登熟初期のイネは高温に曝されると、乳白粒が多発し品質が低下する。高温がイネ穎果登熟代謝に及ぼす影響を解明するために、マイクロアレイ等を用いて登熟代謝関連遺伝子の網羅的発現解析を行い、いずれの代謝反応が白濁化の原因になっているか推定する。
成果の内容・特徴
  1. イネ「日本晴」を人工気象室内で栽培し、開花後5-20日(DAF)の乳熟期穎果に高温処理(33/28°C)および対照処理(25/20°C)を施すと、高温条件で登熟した米粒はデンプン粒の充実不足により外観が著しく白濁化して粒重が低下する。
  2. 温度処理中10DAFの穎果を用いて、22Kマイクロアレイ解析およびディファレンシャルスクリーニングを行うと、高温によって発現が変動する遺伝子はデンプン代謝関連、貯蔵タンパク質関連、熱ショックタンパク質(HSP)関連に大別される。
  3. 定量的RT-PCR法を用いた穎果における登熟段階別の経時的発現解析において、高温によってデンプン粒結合型デンプン合成酵素遺伝子(GBSSI)、デンプン分枝酵素遺伝子(BEIIb)、細胞質型ピルビン酸リン酸ジキナーゼ(cyPPDKB)等のデンプン合成関連遺伝子および13kDプロラミン遺伝子の発現が抑制され、デンプン分解に関与するα-アミラーゼ(Amy1A, Amy3D, Amy3E)およびHSP遺伝子の発現が誘導される(図1および図2)。
  4. 高温区では、アミロース含量は低下し、アミロペクチン側鎖の短鎖が減少し、長鎖が増加するなど、玄米の胚乳に含まれるデンプンに影響が現れる。これらの変化はGBSSIおよびBEIIbの発現低下と一致している。
  5. GBSSI変異およびBEIIb変異、cyPPDKB変異により、胚乳デンプンがそれぞれ糯および粉質化して玄米が白濁することが報告されていることから、これらの遺伝子の発現低下が白濁化に関与している可能性がある。また、α-アミラーゼ過剰発現イネの胚乳が白濁化するとの報告もあることから、高温によるα-アミラーゼ遺伝子の発現誘導も玄米の白濁化と合致している。
成果の活用面・留意点
  1. 高温応答性がみられた遺伝子は、胚乳特異的に強制発現や発現抑制させることによって、高温登熟性の改良を目指した遺伝子組換え作物の作出に利用できるものと考えられる。
図表1 226654-1.gif
図表2 226654-2.gif
カテゴリ 温度処理

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