大麦のβ-グルカン欠失変異の遺伝様式と胚乳細胞壁構造

タイトル 大麦のβ-グルカン欠失変異の遺伝様式と胚乳細胞壁構造
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2002~2007
研究担当者 塔野岡卓司
吉岡藤治
青木恵美子 
発行年度 2007
要約  大麦のβ-グルカン欠失変異遺伝子(bgl)は単因子劣性で、7H染色体上に座乗し、裸性遺伝子(nud)と14.4%の組換え価で連鎖する。β-グルカン欠失系統は胚乳細胞壁のマトリクス構成多糖量が少なく、細胞壁が薄くなる。
キーワード オオムギ、胚乳細胞壁、β-グルカン、アラビノキシラン
背景・ねらい  大麦穀粒に含まれるβ-グルカンは胚乳細胞壁の主要構成多糖で、穀粒の硬軟質性に深く関わっており、人体にとっては高い機能性を有する食物繊維として有用である。一方、β-グルカン欠失系統「OUM125」(「赤神力」の突然変異系統、岡山大学資源生物科学研究所)が見いだされており、従来の品種とは異なる品質特性を持つ可能性がある。そこで、β-グルカン欠失変異の遺伝様式を明らかにするとともに、実用品種を遺伝的背景とする準同質遺伝子系統を作出して品質特性を解析する。
成果の内容・特徴
  1. β-グルカン欠失変異は単因子劣性遺伝子に支配され、この遺伝子は7H染色体上の裸性遺伝子(nud)と14.4%の組換え価で連鎖する(表1)。このβ-グルカン欠失変異遺伝子をbgl〔=beta-glucanless〕とする。
  2. 「ニシノホシ(bgl)」は二条大麦「ニシノホシ」を遺伝的背景として戻し交配によって作出した、bgl遺伝子を持つβ-グルカン欠失性の準同質遺伝子系統である(図1)。
  3. β-グルカンとともに穀粒細胞壁のマトリクスを構成するアラビノキシランは、「ニシノホシ(bgl)」では「ニシノホシ」よりも含有率が高くなるが、粒あたり含量での有意な差はない(表2)。したがって、「ニシノホシ(bgl)」では細胞壁マトリクスの主要構成多糖量が少ない。
  4. 「ニシノホシ(bgl)」の胚乳細胞壁は「ニシノホシ」よりも薄い(図2)。
  5. 「ニシノホシ(bgl)」の穀粒硬度は「ニシノホシ」よりも小さい。また、搗精に要する時間が短く、砕粒率が高い(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 「ニシノホシ(bgl)」はβ-グルカン合成に関する遺伝・生理研究のほか、アラビノキシランの機能性や用途開発のための研究材料として活用できる。
  2. 「ニシノホシ(bgl)」は「ニシノホシ」よりも出穂期がやや遅く、稈長が短いなど、生育面でもβ-グルカン欠失の影響と考えられる特徴を有する。
図表1 226667-1.gif
図表2 226667-2.jpg
図表3 226667-3.gif
カテゴリ 大麦 機能性 品種

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