めんの食感、色、生地物性に優れ良質多収の小麦新品種候補「東海103号」

タイトル めんの食感、色、生地物性に優れ良質多収の小麦新品種候補「東海103号」
担当機関 愛知農総試
研究期間 2001~2008
研究担当者 藤井潔
辻孝子
吉田朋史
井澤敏彦
池田達哉(近中四農研)
船附稚子(北海道農研)
発行年度 2008
要約 「東海103号」はやや低アミロースで、グルテニンの改良により生地物性が適度に強く、めんの食感に優れ、灰分が低く、粉色が明るく黄色味を帯び、日本めん用に適する。早生・短稈で倒伏に強く良質多収の軟質小麦で、縞萎縮病に強く耐湿性にやや優れる。
キーワード コムギ、生地物性、日本めん、グルテニン、食感、多収、DNAマーカー選抜
背景・ねらい 東海地域の主要品種である「農林61号」は用途面の汎用性があるものの、日本めん用としては灰分が高く、めん色がくすみやすく、通常アミロースタイプのため食感も優れない。栽培面では倒伏しやすく、中生で梅雨入りと成熟期が重なりやすいことが問題である。一方、普及が進んでいる「イワイノダイチ」は早生で倒伏しにくく、やや低アミロースタイプのため、めんの粘弾性や滑らかさに優れ、色も「農林61号」に勝る。しかし、生地物性が弱く、「煮溶け」、「短めん」、「落めん」等が発生しやすく、単品ではめんが作りにくいことが実需者から指摘されている。そこで、生地物性を強化するグルテニン遺伝子をDNAマーカー選抜によって集積し、やや低アミロースで生地物性が適度に強く、日本めんに適した早生・強稈で良質・多収の小麦品種を育成する。
成果の内容・特徴 「東海103号」は2001年春に生地物性の強い「きぬの波」と早生多収の「西海184号」を交配し、派生系統育種法で選抜固定を図ってきた系統で、2008年度の世代はF8である。 育成地では「農林61号」と比較して次のような特徴がある(表1)。
  1. 播性は同程度の“Ⅱ”で、出穂期・成熟期はともに4日早く、早生種である。
  2. 白ふで、稈長は短く耐倒伏性に優れ、穂長は1cm程度長く、穂数は同程度である。
  3. 収量は20%程度多収で、千粒重はやや大、容積重はわずかに小さく、外観品質は同程度で良質である。原麦灰分は低く、蛋白質含量はやや低い。
  4. 耐湿性は“やや強”(図1)、縞萎縮病抵抗性は“強”で優れる。
  5. 穂発芽性は“難”、赤かび病抵抗性は“中”で同等。うどんこ病抵抗性は“やや弱”でやや劣る。
  6. 製粉性はミリングスコアでやや優れる。小麦粉の色相は灰分含量がやや低く良好。
  7. 生地物性を強化する3種のグルテニン遺伝子(Glu-A1b、Glu-A3d、Glu-B3g)を集積しており、やや低アミロース品種としてはグルテン強度(マイクロSDS沈降価)、生地物性(エキステンソグラム)が強く、「農林61号」と同等で、やや低アミロース品種の「イワイノダイチ」より明らかに生地強度が強く優れる(図2)。
  8. アミロース含量はやや低アミロースタイプで、アミログラム最高粘度が高い。
  9. 生めんの色相は明るくクリーミー(図3)。官能評価は、めん色、外観、粘弾性、滑らかさが優れ、硬さも同等で、合計値は「農林61号」、「イワイノダイチ」より高い。
成果の活用面・留意点
  1. 温暖地西部の麦作地帯に適し、生地物性が適度に強く、日本めんの食感、色、コシに優れる特徴から、愛知県の地元製粉・製麺会社等から早期の普及が期待されている。
  2. 粗蛋白質含量を確保するため、生育に応じた追肥を実施する。
  3. 赤かび病抵抗性が“中”でうどんこ病抵抗性が“やや弱”であるため、適切な防除に努める。
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カテゴリ 病害虫 育種 萎縮病 うどんこ病 くり 小麦 新品種 耐湿性 DNAマーカー 抵抗性 品種 防除

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