タイトル | 放牧地におけるアブ群集の構造決定要因 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1999~2001 |
研究担当者 |
森本信生 井村 治 時 坤 佐々木寛幸 神田健一 柴 卓也 |
発行年度 | 2001 |
要約 | アブは、山地・平地・河川敷などの地形条件や距離的に近い放牧地では、群集構造はお互いに類似度が高く、地形や地理的要因が、アブの群集構造の決定に重要である。放牧地周囲の水域の存在は、ニッポンシロフアブは増加、アオコアブは減少をもたらす。 |
キーワード | アブ、群集、放牧地、地形、植生、環境保全、昆虫類 |
背景・ねらい | 生物多様性条約が批准され、それに基づき生物多様性国家戦略が策定されている。そこでは、二次草原を含む二次的自然の重要性が述べられている。しかし、放牧草地における生物多様性の評価や、その維持管理の手法についての研究は、多くはない。一方、アブは、哺乳動物の血液を栄養源として産卵を行うため放牧牛の重要な害虫となっているが、このことは、同時に放牧草地の特徴的な昆虫であることを意味する。これまで各地でアブ相の調査が行われ、環境評価の指標として重要であると指摘されている。しかし、複数の放牧地のアブ相を比較し、それに基づいた解析は行われてこなかった。そこで、複数の放牧地で発生するアブを調査し、その群集構造とそれを支配する要因について解析し、放牧草地の生物多様性の評価・管理の基礎資料とする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 栃木県那珂川流域を中心とした地域の放牧地17カ所において、1999 年から2001 年の3年間、5月から10月まで月に1回、二酸化炭素を誘引源とする蚊帳トラップによるアブ相の調査を行った。さらに、それぞれの放牧地の植生、気象、地理情報を収集した。 2. 3年間で26種8776個体のアブが採集された。ニッポンシロフアブが最も多く、次いで、アオコアブ、フタスジアブがそれに続いた。 3. それぞれの放牧地における群集構造の類似度をワード法によって得られたデンドログラムで示した(図1)。山地・平地・河川敷などの地形が類似していたり距離的に近い放牧地では、群集構造はお互いに類似度が高く、地形や地理的要因が、アブの群集構造の決定に重要であることが示された。 4. それぞれのアブの生息場所の類似度をワード法によって得られたデンドログラムで示した(図2)。ニッポンシロフアブ、アオコアブ、フタスジアブは、それぞれ別の分岐に属し、これらの種が同所的に分布しない傾向あることが示された。 5. 各放牧地のそれぞれのアブ種の個体数を従属変数、放牧条件や気象条件を説明変数とし、ステップワイズ法による重回帰分析で解析した。その結果、放牧頭数や草地面積、放牧日数との相関が見られる種は少なく、気温との負の相関が見られる種が多かった。 6. 各放牧地のそれぞれのアブ種の個体数を従属変数、周囲の植被率を説明変数とし、関係をステップワイズ法による重回帰分析で解析を行った(表)。周囲に水域が存在すると、ニッポンシロフアブは増加、アオコアブは減少した。低木の存在は、個体数を減少させる傾向がみられた。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 生物多様性に配慮し、かつアブの発生個体数が少ない放牧草地の維持・管理のための基礎資料となる。 2. 調査は、栃木県で行われたものであるので、種類構成比などは、直ちに全国的には適応できない。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 害虫 評価法 |