タイトル | 火入れ放棄がススキ草地の局所的な動態に及ぼす影響 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1992~2001 |
研究担当者 |
井出保行 下田勝久 坂上清一 手島茂樹 斉藤吉満 東山雅一 林治雄 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 火入れを継続しているススキ草地は、草地全体でも局所的にも変化の少ない植物群集であるが、火入れを放棄した草地では、草地全体としては変化が少ないものの、局所的にはハタネズミの撹乱によって非常に変化の激しい植物群集となっている。 |
キーワード | 生態、イネ科野草、ススキ、ハタネズミ、撹乱、火入れ |
背景・ねらい | 我が国における代表的な半自然草地であるススキ草地は、種の多様性に富み、かつ氷河期に大陸から渡ってきて取り残された貴重な植物群も有する。しかし、ススキ草地は、畜産的利用の減少や人手不足から採草・火入れによる維持管理が放棄され、その面積は急速に減少している。現存する草地の多くも維持管理が行き届かず、草地内で変化を起こしていると考えられる。それ故、その変化を火入れ区と火入れ放棄区における植生の動態を明らかにすることで、維持管理の重要性を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 霧ヶ峰ススキ草地で、火入れを20数年継続している草地と約30年前に利用放棄した草地に植生調査区(コドラート)を設置し、植生調査を行った。各区のコドラートデータの平均値を使って、拡張積算優占度(E-SDR2)を算出し、草地全体を比較した。 2. その結果、ススキは、両調査区共に優占度の年次変動は少ないが、火入れ区の優占度は高い(表1)。また、両区での種組成の違いはあるが、各構成種の優占度は年次変動が少ない。 3. これまでの手法と違い、コドラートごとに個々の植生調査の被度データを使用し、調査開始時点との相似性の変化を相関係数で比較することで、草地の局所的な動態を比較した。 4. その結果、火入れ区では、局所的にも相関係数は変化しないのに対し、放棄区では、相関係数が急速に低下するコドラートが出現し局所的変化が大きく(表2)、平均相関係数の急速な低下が起こっている(図1)。これは、火入れ区では、ハタネズミの営巣活動による植生の撹乱が全くないのに対し、放棄区では、被度にして平均5.4%も撹乱されていることによる。 5. 以上のことから、草地全体で捉えると、管理の違いに関係なくススキの優占する非常に安定した草地のように見えるが、放棄された草地では、局所的にハタネズミの撹乱により構成種が入れ代わる、変化が激しい不安定な草地であることが明らかになった。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ススキ草地の維持・管理に活用できる。 2. 霧ヶ峰という高標高地の成果であるため、植物の生産性の高い温暖な地域ではハタネズミの影響が比較的小さい可能性がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
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