タイトル | 霧ヶ峰におけるススキの更新様式 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 1992~2001 |
研究担当者 |
井出保行 下田勝久 坂上清一 手島茂樹 斉藤吉満 東山雅一 林治雄 |
発行年度 | 2001 |
要約 | 霧ヶ峰ススキ草地は、ススキの生育限界に近い高標高地に成立しており、ススキの種子生産は、数年に一度のなり年にしか見られない。また、その実生の定着更新にはハタネズミによるリターの撹乱が不可欠である。加えて、ハタネズミは、栄養繁殖によるススキ茎数の増加も抑制している。 |
キーワード | 生態、イネ科野草、ススキ、ハタネズミ、種子更新、栄養繁殖、撹乱 |
背景・ねらい | 我が国における主要な在来飼料植物であるススキは、採草や放牧に利用されてきたが、この草地を維持管理するために不可欠なススキの種子更新や栄養繁殖に関する研究は少い。霧ヶ峰ススキ草地は、生育限界に近い高標高地にあり、主要な分布域とは違った特性があると考えられ、草地を維持管理していく上でススキの更新を明らかにする必要がある。 |
成果の内容・特徴 | 1. ススキの生育限界に近い霧ヶ峰ススキ草地(標高1600m)では、8年間で種子の生産が正常に行われたのは、1994年の1回のみであり(図1)、ススキの種子生産はまれな現象である。 2. 1994年に生産された約3500/m2の種子から、翌年約450/m2の実生が発生した。これをススキのリターが堆積したリター区と、ハタネズミの営巣活動によって生じた、土壌むき出しの撹乱区に分けて追跡調査した結果、ススキが定着・更新できたのは、撹乱区のみであった(図2)。 3. ハタネズミの採食による影響を畦シートと柵で除去した柵内区と、自由に採食できる柵外区に分けて、ススキの茎数の変化を3年間にわたって追跡した。柵内区では栄養繁殖によって茎数が増加するのに対し、柵外区ではほとんど茎数に変化が無く、定常状態であった(図3)。 4. 以上のことから、霧ヶ峰ススキ草地では、ススキの種子生産はまれな現象であり、その後の定着・更新には、ハタネズミの営巣活動によるリターの撹乱が不可欠であること、また、栄養繁殖による茎数の増加もハタネズミの採食によって抑制されていることから、霧ヶ峰ススキ草地でのススキは、ほぼ定常状態にあると言える。 |
成果の活用面・留意点 | 1. ススキの生育限界に近い、高標高地や北日本でのススキ草地の維持管理に活用できる。 2. ススキの生育限界地での知見であるため、本州以南の草地では、ススキの更新様式はこれと異なると考えられる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 繁殖性改善 |