糞虫の多様性をもたらす放牧草地の立地環境

タイトル 糞虫の多様性をもたらす放牧草地の立地環境
担当機関 (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所
研究期間 1999~2001
研究担当者 井村 治
森本信生
佐々木寛幸
時 坤
吉松慎一
発行年度 2001
要約 栃木県の放牧草地の糞虫の多様性について、放牧草地周辺の景観要素をフラクタル次元を用いて評価・解析した結果、糞虫の多様性をもたらす放牧草地の立地条件としては、落葉広葉樹、牧草地の要素が多く、人工林の要素が少ない環境が望ましいと予測される。
キーワード 環境保全、昆虫類、放牧草地、糞虫、多様性、景観要素、フラクタル次元
背景・ねらい 放牧草地には多様な生物相が維持されてきた。近年草地畜産の衰退や草地の管理方法の変化により、草地特有の貴重な生物種が減少し、その保全が緊急の課題となっている。草地が持つ生物多様性保全機能を発揮させる草地畜産の方策を探るための基礎として、栃木県北東部の放牧草地において、家畜糞を食べて生活している糞虫を多様性の指標種として調査し、景観要素を解析することにより糞虫の多様性をもたらす放牧草地の立地条件を予測する。
成果の内容・特徴 1.
1999 年~2001 年に、栃木県北東部の那珂川流域を中心とした地域にある放牧草地18地点(採草地1 地点を含む)で、牛糞を用いたトラップを用いて糞虫を調査したところ、25 種約5 万個体の糞虫が捕獲され、栃木県でこれまでに記録された糞虫類の40 %以上の種が出現した。
2.
各 放牧草地において多様な糞虫相が見られたが、場所によってその多様性は異なって
いた(図1)。
3.
糞虫の多様性に対する放牧草地周辺の植生や土地利用などの景観要素の影響を評価するために、環境庁第5 回自然環境保全調査の植生調査を基にして作成されたベクターデータから、昆虫の生息環境として10 要素(落葉広葉樹、針葉樹、人工林(スギ、ヒノキ)、低木、草本、牧草地、水田、畑、市街地、水域)を抽出した(図2)。また各景観要素の空間的分布を定量化するために、各要素の大きさ、形、数、ちらばり等を総合的に評価できる指数としてフラクタル次元を採用し、調査地点を中心に4km方形区域内(図2)についてこれを算出して以下の解析に用いた。
4.
放 牧草地の糞虫の種数(図1)を多様性の指標として、調査した3 年間について景観要素のフラクタル次元を説明変数とする変数選択型重回帰分析を行った。3 年間のモデルの内、2 年以上説明変数として選択された景観要素から見て(表1)、糞虫の多様性は落葉広葉樹、牧草地の要素が多く、人工林の要素が少ない土地利用において高いと予測された。糞虫の多様性の高い放牧草地の立地条件としては、落葉広葉樹に囲まれ、周囲に牧草地が点在する環境が望ましいと考えられる。
成果の活用面・留意点 1.
放 牧草地の持つ糞虫を保全する機能の評価に使えるとともに、糞虫の多様性の高い放牧草地を維持・造成する場合の立地の参考となる。
2.
栃 木県の北西部の放牧草地の研究に基づいており、全国的に展開するには土地利用や糞虫相の異なる各地域での調査研究が必要である。
図表1 226761-1.gif
図表2 226761-2.gif
図表3 226761-3.gif
カテゴリ 水田

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