茎頂分裂組織を用いたネオティフォディウム・エンドファイトの観察・検出法

タイトル 茎頂分裂組織を用いたネオティフォディウム・エンドファイトの観察・検出法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2007~2007
研究担当者 菅原幸哉
大久保博人(国際農研)
岡部郁子
月星隆雄 
発行年度 2007
要約 ライグラスなどイネ科草本の茎頂分裂組織を切り出し、ラクトグリセロールに浸漬して脱色・透明化して微分干渉顕微鏡で透過観察することで、ネオティフォディウム・エンドファイトの共生および感染状況を容易に観察・検出することができる。
キーワード エンドファイト、イネ科牧草、茎頂分裂組織、微分干渉顕微鏡
背景・ねらい イネ科牧草に感染する共生糸状菌であるネオティフォディウム・エンドファイトは、宿主植物の生育を促進するため、牧草や緑化植物等の栽培・育種に活用できる遺伝資源として注目されている。本菌は従来、葉(葉鞘)や種子を用いて観察・検出が行われていたが、植物組織内での菌の密度が低い場合や、植物組織内に侵入した他の病原菌・腐生菌との識別が障害となり、観察が困難な場合がある。そこで、花器内部の菌の観察法を応用し、エンドファイトが感染・定着している茎頂分裂組織を利用する観察・検出法を開発した。
成果の内容・特徴
  1. 観察用の茎頂分裂組織は、対象植物株の分げつ茎から一部(数本程度)を地下部を含めて採集して根と葉鞘をある程度除去し、対象組織のやや上部と目される部分で斜めに切断、その後、実体顕微鏡下で解剖して厚さ0.5mm程度以下の組織片として切り出す(図1)。
  2. 切り出した組織片をラクトグリセロール(乳酸:グリセリン:蒸留水=1:2:1の混合物)でスライドグラスにマウントする。粘性が高い液なので、切片を処理液に十分になじませ、気泡が入らないよう注意してカバーグラスをかける。数時間~1晩程度置くと組織が脱色・透明化するので、微分干渉顕微鏡で観察する。0.01%酸性フクシン、コットンブルー等での染色を併用しても良い。
  3. 微分干渉顕微鏡の焦点深度と偏光フィルターの調整により組織中の菌が立体的に観察できるので、菌の感染の有無、および菌が植物と共生的な関係にあるかどうか、すなわち、植物の組織に侵入したり破壊したりせず、細胞間隙に親和的に定着しているかどうかが確認できる(図2)。
  4. 作成したプレパラートは、冷蔵庫内で1年程度の保管が可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 植物体の開花や結実の有無、葉の多寡などの生育状況に左右されずに菌の観察・検出が可能なので、感染の有無の判定や、感染植物を育種する過程での感染状況のモニタリング、野草等からの新規の共生糸状菌の探索等に活用できる。
  2. 茎葉中での菌の密度が低いエンドファイトの場合でも、種子伝染性の共生糸状菌は必ず茎頂分裂組織周辺に定着しており、本法の使用で効果的な検出が可能である。
  3. ネオティフォディウム・エンドファイトに感染した植物においても、まれに感染が認められない分げつ茎が生じる場合があり得ることから、調査時には反復をとるなどの留意が必要である。また、感染している菌種の特定には、分離・培養による菌の特性の調査や、DNAを用いた比較検討などの併用が必要である。
図表1 227192-1.gif
カテゴリ 育種 遺伝資源 モニタリング

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