用水路の洪水流放流機能評価

タイトル 用水路の洪水流放流機能評価
担当機関 農業工学研究所
研究期間 1999~1999
研究担当者 石堂隆憲(現緑公団)
相川泰夫(現関東農政局)
中達雄
田中良和
島武男
発行年度 1999
要約 洪水時に農業水利施設が地域排水を不可避的に受け入れ、結果的に公益的な防災機能を発揮する場合がある。1998年に記録的豪雨に見舞われた那須野ヶ原地区において、用水路の洪水流放流機能の定量的評価を行った。
背景・ねらい 新基本法では、農業・農村に対して国民が求める役割として、新たに「多面的機能の発揮」が位置づけられ、その施策が重要となっている。この多面的機能の中で農業水利施設においては、ダムの利水空き容量の活用や用水路による地域排水の受け入れなどによって、河川や市街地の洪水ピーク流量を軽減するなどの公益的機能が注目されている。そこで、1998年に5日間で降雨量が700mmを超える記録的な豪雨に見舞われた那須野ヶ原地区(複合扇状地)において、水利施設の災害後の現地調査および洪水時の関連資料より、本地区の用水路の洪水流の放流機能の評価を試みた。
成果の内容・特徴
  1. 下段幹線水路は用水路としての機能の他に、本地区扇状地を横断していることから、扇状地上流からの洪水流を捕水し、放水工などにより地区内の自然河川へ放流する機能も有している。土地改良区連合が洪水直後に調査した下段幹線水路の洪水痕跡(洪水位)を基に、流れを等流と仮定してマニング公式により、用水路のピーク洪水流下量を推定した(図1)、(写真1)。
  2. ピーク時の幹線水路流下量および放流工、支線水路の流下量を推定し、水路網全体(頭首工~No.804まで)としての放流機能として、約56.0m3/sであったことを明らかにした(図2)。この洪水放流量は、本用水路の施設容量(設計流量)の6.0倍以上に達するものであった。記録的な豪雨にも拘わらず、那須野ヶ原扇頂部より流入した洪水流を水路網により下流自然河川へ排水させ、下段幹線水路左岸側の比較的平坦な市街地に対して、洪水の発生低減を図ったものと推察できる。
  3. 水路中間部に位置する赤田調整池の洪水時の水収支データより、用水路へ流入した洪水流の内136千m3(ピーク流入量35m3/s、調整池自流域の流出量も含まれる)を一時貯留したことを明らかにした(図3)。
  4. 放流機能の発現は、管理主体である土地改良区の洪水時の機敏な施設操作によるものであり、また、日常の分水工操作などの利水管理を一元的に中央で行っている土地改良区の連合体の存在が不可欠であることを明らかにした。
成果の活用面・留意点 農業水利施設の多面的機能の一端が定量的に評価でき、また、その発現に係わる管理体制についての知見は、今後の行政施策に資する。
図表1 227822-1.gif
図表2 227822-2.gif
図表3 227822-3.gif
図表4 227822-4.gif
カテゴリ 水管理

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