タイトル |
13.低平地水田地帯における水路条件の異なる農業水路での魚類相の実態 |
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研究期間 |
2001~2003 |
研究担当者 |
奥島修二
山本勝利
小出水規行
竹村武士
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発行年度 |
2003 |
要約 |
低平地水田地帯において、隣接する新・旧圃場整備地区の水路に生息する魚類相を解明する。新圃場整備地区のコンクリート2面柵渠水路では多様な魚種が生息するものの、旧圃場整備地区の土水路とでは、優占種、フナ類の体長組成に違いがある。
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背景・ねらい |
圃場整備に伴い用排分離、直線化されたコンクリート三面張り水路構造、落差工の設置等の農業水路での生息環境の悪化を招くことが指摘されている。生態系との両立を目指す水田圃場整備技術の確立が望まれているなか、これら水路を利用している魚類の生息実態の解明が急務であり、実態調査のデ-タ蓄積を図る必要がある。
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成果の内容・特徴 |
- 利根川右岸(千葉県佐原市)の圃場整備水準の異なる地区が隣接する低平地水田地帯の水路を調査対象とした。旧整備地区の用・排水路は、幅60-140cm、水深0-50cmの土水路であり、新整備地区は幅90-260cm、水深30-150cmのコンクリート2面柵渠排水路である。承水路、ゲートを通して八間川に接続し、水路内には、潮汐の影響による水位、流速変動が生じている(図1)。
- 旧整備地区(水路長3,061m、水面面積3,350m2)を116区間、新整備地区(水路長3,796m、水面面積5,227m2)を42区間に分け、タモ網、電気ショッカー、小型定置網への追い込みにより魚類の全量採捕を行い、種の同定、体長測定後速やかに放流した。2001.11、2002.2、2002.6、2002.11、2003.2、2003.7、2003.11の計7回魚類調査を実施した。
- 調査地区近傍で確認されている魚種は、15科41魚種であるが、このうち旧整備地区では7科11魚種12,017個体、新整備地区では7科13魚種5,005個体が確認された(表1、図2)。両地区とも八間川との間の移動障壁はないものの優占種に違いが生じている。旧整備地区でフナ類・メダカ・ドジョウ、新整備地区ではフナ類・モツゴが優占種となっている。水田との関連が深いドジョウ・メダカが新整備地区で少なく、タナゴ・ワタカは土水路では確認されなかった。水路幅、水深を含めた水路環境が八間川のそれに近づいていることに起因すると考えられる。
- 両地区のフナ類の全個体の体長比較では、新整備地区での体長が有意に大きい(Mann-Whitney U 検定:p<0.001)。旧整備地区では稚魚・未成魚の個体群に限られているのに対し、新整備地区では年間を通して成魚と稚魚・未成魚の個体群が混在している(図3)。フナ類は、土水路を春季から秋季にかけて産卵、生育の場として利用し、冬季には水深のある八間川へ移動すると考えられる。
- 圃場整備により水路の生息環境は大きく変化するが、地域や周辺状況によっては、本地区のような水路幅・水深のあるコンクリート2面柵渠水路でも多様な魚類が生息する場合もある。
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成果の活用面・留意点 |
自然環境が異なる地域の調査事例を増やし、デ-タの蓄積を図る必要がある。 |
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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カテゴリ |
水田
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