タイトル |
用水路と畦畔からの漏水で湿害が著しいほ場の簡易な水田汎用化技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2006~2007 |
研究担当者 |
国立卓生(中央農研)
若杉晃介
小倉 力
島田信二(中央農研)
藤森新作
濱口秀生(中央農研)
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発行年度 |
2007 |
要約 |
老朽化し漏水の著しい既設の開水路内に塩ビ管を埋設し、自然圧パイプラインとすることで、漏水と無効放流が防止でき湿害と用水不足が解消される。さらに、レーザーレベラーによるほ場面傾斜化で表面排水が迅速化し、転作作物の安定栽培が期待できる。
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キーワード |
開水路、漏水、用水不足、自然圧パイプライン、レベラー、ほ場面傾斜化
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背景・ねらい |
ほ場整備の完了後年数を経た地区では用水路の老朽化に伴う漏水や田面均平度の低下、透水性の悪化などが顕在化し、田畑輪換による畑作物栽培が困難となっている。こうした地区において、自然圧パイプラインによる開水路の漏水防止と軟弱地の走行が可能なハーフクローラトラクタ利用による溝掘り、耕盤破壊、及びレーザーレベラーによる田面傾斜化、アゼシートによる隣接水田からの漏水防止など、営農組織レベルでできる基盤整備技術を導入することにより転作の安定化に寄与する。
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成果の内容・特徴 |
- 実証地区は、用水路(U字溝)の沈下や老朽化による漏水と隣接水田からの侵入水で湿地状態のため、転作作物の栽培が困難な状態にある(図1)。
- 老朽化したU字溝内への高質塩化ビニル管の埋設に伴う資材費は、管(φ150mm~100mm)とバルブ・取水枡(12カ所)等で2.5千円/m(10a当たり約25千円)と低コストである。
- 田面湛水の排除と土壌の乾燥を図るため、プラウ式溝掘機による深さ20cmの浅溝とサブソイラによる耕盤破壊(深さ40cm)をハーフクローラトラクタを用いて行う(図2)。作業終了後20日間で地耐力はトラクタ走行に必要な0.4MPaを大きく上回る1.5MPa以上となり、ホイールトラクタを利用したプラウ耕、並びに牽引式レーザーレベラーによるほ場面の傾斜均平が可能となる。
- 整備前は、湿害から転作作物は生育せず、雑草が生い茂っていたが、整備後の大豆の坪刈り収量は、タチナガハで411kg/10a(茨城県平均151kg/10a)、納豆小粒で274kg/10aとなる。
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成果の活用面・留意点 |
- 自然圧パイプラインは、水源と田面との標高差が20cm以上あれば、加圧を行わなくてもパイプライン化が実現する。実証地区は、支線水路の用水取水口の水面と田面との差が20cmと低水頭であるが、空気弁の使用により、末端(総延長300m)までの用水供給を可能とする。
- 自然圧パイプラインの施工は、技術者の指導を受ければ、営農組織レベルでも可能である。
- 本技術は、大規模営農組織等が所有する農業機械で施工可能である。また、排水不良で耕作放棄された農地の有効活用にも寄与できる。
- 漏水で転作が困難なほ場で汎用化が可能となる。
- ほ場の地下水位が高い場合は、ほ場面傾斜化のみでは湿害回避は困難であり、地下水位調節システム等の導入を必要とする。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
病害虫
乾燥
雑草
湿害
水位調節
水田
大規模営農
大豆
低コスト
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