タイトル |
水循環変動が食料に及ぼす影響評価・予測のためのAFFRC水-食料モデル |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
桑形恒男(農環研)
古家淳(国際農研)
石郷岡康史(農環研)
早野美智子(農環研)
増本隆夫
多田稔(国際農研)
谷口智之
長谷川利拡(農環研)
鳥谷均(農環研)
坪山良夫(森林総研)
堀川直紀
澤野真治(東大院生命科学)
|
発行年度 |
2007 |
要約 |
資源管理に関する操作可能な因子を組込んだ「水文・水利用モデル」「生産量予測モデル」「食料需給モデル」の精緻化を行い、それらを統合したモデルである。このモデルにより水循環変動が影響を及ぼす食料・環境に係る政策的な対策シナリオを提案できる。
|
キーワード |
食料需給モデル、水循環、コメ、稲生長モデル、水需要、水利用、水管理
|
背景・ねらい |
水は食料を生産するための不可欠な資源であり、地球規模の水循環変動は世界の水需給の逼迫と食料生産力の低下をもたらすことになり、我が国の食料の安定供給の確保にも大きな影響を及ぼすことが懸念されている。特に、畑作物に特化した既存の食料需給モデルに対して、アジアモンスーン域の特徴を活かす水と食料(コメ)生産変動予測が望まれる。 そこで、ここでは地球規模の水循環変動が食料生産に及ぼす影響の評価・予測とそれへの対策シナリオを提案するために、水循環過程を組み込んだ食料需給モデルを開発する。
|
成果の内容・特徴 |
- AFFRC(Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council)水―食料モデルは、水循環変動に関わる水需要、水供給、水配分などの操作可能な因子を組み込んだ精緻化した水文・水利用、生産量予測、食料需給の各モデルを有し、水循環変動が食料生産に及ぼす影響を評価して政策シナリオ(食料・水・環境)を提案できるツールである(図1)。
- 水田の実蒸発散量は大気側の情報を用いた可能蒸発散量のほか、表層や根群域の土壌水分量低下による水ストレスをも考慮して求められる(図2)。また、河川流量を推定し、この供給可能量と蒸発散から求められる必要水量を比較して取水量を算出する。なお、様々な農業用水利用方式や土地利用形態を考慮し、さらには天水田、灌漑水田を詳細に分類することによりこれらの特徴に対応している。
- 生産量予測については、1)水田の作付(移植)面積が雨季の進行に伴い増加する、2)イネの日長感応性を考慮した生育期間や窒素肥料投入量に伴うイネ群落の成長、3)イネのバイオマス生産と収量は生育期間中の実蒸発散量の積算値に比例することをモデルに組み込んでいる(図3)
- 水文・水利用モデルにより、1)メッシュごとの地域内(土地利用が混在)の流出計算による水供給量、2)実蒸発散量計算による水需要量、3)農業用水の需給検討のための水管理・水配分量のそれぞれが推定できる。
- 上記のように水循環変動や水管理などに影響される可能供給水量を反映している実蒸発散量を利用することにより、本モデルは水循環変動や政策の影響を反映した食料需給を予測することができる。また、多変量分布シミュレーションの方法に基づき、蒸発散量の地域間の相関を考慮してコメ需給の確率分布分析も行う。例としてラオスの価格予測を図4に示す。さらに、土地利用変化(開発も含む)、品種改良、灌漑の促進(図2)、水管理の向上等の対策シナリオ検討も可能である。
|
成果の活用面・留意点 |
- 畑作物を主対象とした既存の食料需給モデルの代替として、稲作主体地域の食料への影響評価に利用可能である。ここでは各種の水循環特性を有するメコン河への適用結果が示されているが、アジアモンスーン域の全地域・流域にも適用できる。
- 地球温暖化に伴う水循環変動やその食料に対する影響度予測、食料政策に対する緩和策・適応策の評価等にも適用可能である。
- 手引き書として日本語版(AFFRC水-食料モデルの統合化ハンドブック)及び英語版(Integrated manual for AFFRC Water Cycle-Food Model)をそれぞれ作成・配布している。
|
図表1 |
|
カテゴリ |
肥料
水田
品種改良
水管理
|