タイトル |
農村・農作業体験学習が持つ心理的な教育・保健休養機能の定量的把握 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
栗田英治
山本徳司
豊田裕道(東京農大)
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発行年度 |
2008 |
要約 |
小・中学生が農村・農作業体験学習を行った場合に、体験前後において、心理的な「怒り」や「不安」が低下していること、体験プログラムや年齢による効果の違いなどが、日本版POMSを応用した質問紙法により定量的に把握することができる。
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キーワード |
POMS、農作業体験、教育機能、保健休養機能
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背景・ねらい |
農業・農村体験がもつ教育・保健休養機能の効果を定量的に解明することは、都市農村交流の増加、グリーンツーリズムの推進など、地域の活性化につながると同時に、効果の高い環境教育と食農教育プログラムの設計にもつながる。そこで、本研究では、北海道札幌市及び新潟県旧松之山町の小・中学生447名(有効数)に、田植え体験や稲刈り体験、生物調査や森林散策といった全17件の自然体験等を実施し(図1)、体験前後で、小・中学生用に改良した日本版POMS(Profile of Mood States)を実施することによって、体験前後の心理的変化を把握・分析し、教育・保健休養機能の定量的な効果について解明する。
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成果の内容・特徴 |
- 18個の尺度指標を元に因子分析を行った結果、表1のように因子負荷量は「怒り」「活気」「疲労」「不安」の4つが抽出され、この4因子で心理効果が定量的に評価できる。
- 小・中学生の全ての体験前後の結果の平均が図2上である。体験後、「怒り」「不安」は、低下傾向にあることがわかる。またこの2つの指標については、どの体験内容についても、体験前後の有意差(水準1%)が確認された。
- 農業・農村体験前後の気分変化量を年齢別に見たものが図2下である。年齢が高くなるにつれて「怒り」「不安」の低下が若干大きい。「疲労」に関しては、対象が低学年になると、慣れない作業のため、疲労感が上昇している。農業体験の学習プログラムを組み立てる際には、年齢を考慮した体験プログラムを検討する必要がある。
- 田植え・稲刈り体験11件の体験前後の変化を分析したところ、田植え体験は「怒り」と「不安」は体験後に低下する傾向にある。また、稲刈り体験は、田植え体験と比べ「疲労」に関しては体験後に上昇する傾向が強い。本手法で、体験プログラムの評価が可能。
- 全17件の農業・農村体験前後の評点の増減率を便宜的に4段階に分け(前後の評点差が+のものを上昇、0未満-0.1以上までを少し低下、-0.1未満-0.3以上を低下、-0.3以下をかなり低下)、評価したものが図3である。この図より、ほとんどの体験行為が「怒り」「不安」は「低下」または「かなり低下」を示しており、体験行為が子供たちに心理的なやすらぎを与えている。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、POMS日本版著作権者である横山和仁氏並びに出版元・株式会社金子書房から限定的に翻訳実施の許諾を得て実施したものである。今後、本手法を活用する場合は、著作権者の了解を得て、著作権法に基づき実施しなければならない。
- 19歳以上の大人を対象とする場合は、従来の日本版POMSを利用すること。
- 図2上は、平成20年度食料・農業・農村白書(農林水産省)に引用されている。
- 農業・農村体験学習を行う学校教育関係者や関係団体等で利用が可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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