タイトル |
ストックマネジメント事業による農業水利施設長寿命化の評価手法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
鬼丸竜治
蘭嘉宣
國光洋二
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発行年度 |
2008 |
要約 |
基幹農業水利施設のストックマネジメント事業における機能診断調査結果を基に、予防保全対策による施設長寿命化の効果を総合耐用年数と年減価償却費の変化により定量的に評価する手法であり、事業による効果が具体的な数値で評価できる。
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キーワード |
ストックマネジメント事業、施設長寿命化、総合耐用年数、年減価償却費
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背景・ねらい |
基幹農業水利施設の長寿命化とライフサイクルコスト(LCC)の削減を目的として、ストックマネジメント事業(機能診断調査、機能保全計画の策定及び予防保全対策)が全国的に実施されている。予算上の対策期間が終了するときには、政策評価のため、事業目的である農業水利施設の長寿命化年数や長寿命化に伴う効果を具体的に示すことが必要となっている。 本研究は、機能診断調査で得られた施設の劣化度や適応可能な対策工法等の情報を用いて、水利施設全体の総合耐用年数と年減価償却費の変化から、ストックマネジメント事業による施設長寿命化年数とその効果を定量的に評価する手法の開発を目指したものである。
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成果の内容・特徴 |
- 本手法は、農業水利施設全体を構成する個々の施設の再建設費と年減価償却費から施設全体の総合耐用年数を定量化し、長寿命化年数を推計するものである。
- 手法の適用性と適用方法を例示するため、国営かんがい排水事業の完了地区において実施された施設機能診断調査の結果を用いて試算する。なお、施設機能診断調査の結果は、「変状がほとんど認められない状態」(S-5)から「早急に改修が必要な状態」(S-1)までの5段階で示される。本事例地区は、施設の供用開始から30年を経過した時点でも、全ての国営造成施設がS-4~ S-3の段階で、良好に維持されていることが確認できる(表1)。
- 表2は、年減価償却費について、計画(ケース0)、施設供用開始から30年間の経過と同様に今後とも施設が推移する場合(ケース1)及び予防保全的に早期に補修を行う場合(ケース2)を比較したものである。現在までの経過が続く場合(ケース1)は、計画での想定(ケース0)よりも、年減価償却費が約20%低下する。予防保全対策(ケース2)により、さらに5%の年減価償却費の節減が可能となる。
- 表3は、水利施設全体の建設事業費を年減価償却費合計で除して求めた総合耐用年数を示す。現在までの経過が続く場合(ケース1)は、計画での想定(ケース0)よりも3.9年長寿命化しており、予防保全対策(ケース2)を行えば、さらに3.8年、施設が長寿命化して長期に利用できるようになる。
- このように、本手法の適用により、事業による施設の長寿命化が具体的な年数で評価できることが特徴である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究の評価手法は、行政部局において、ストックマネージメント事業の政策評価に活用できる。また、末端農業水利施設の維持を目的に実施される農地・水・環境保全向上対策の評価にも応用可能である。
- ここに示す評価結果は、国営造成施設のみの機能診断調査結果に基づく評価であり、関連する県営造成施設の機能診断調査が未実施で、その結果が反映されていないことから、暫定的な試算値であることに留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
コスト
ストック
水管理
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