農村公園の経済評価におけるTCMとCVMの一致点と相違点

タイトル 農村公園の経済評価におけるTCMとCVMの一致点と相違点
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 鬼丸竜治
合崎英男
蘭嘉宣
國光洋二
発行年度 2008
要約  農村公園の費用便益分析で用いられるトラベルコスト法(TCM)と仮想状況評価法(CVM)について、両手法による評価額の一致点と相違点を実証し、アンケート調査データによるCVM評価においてTCMと同等の信頼性を確保するための留意点を示す。
キーワード 農村公園、費用便益分析、仮想状況評価法(CVM)、トラベルコスト法(TCM)
背景・ねらい  都市公園や農村公園の費用便益分析のときの経済評価においては、トラベルコスト法(TCM)と仮想状況評価法(CVM)が用いられている。しかし、利用行動のような顕示データにもとづくTCMに比べ、アンケート調査に依拠するCVMの信頼性が問われる場合も想定される。両手法による評価額の一致点と相違点については、理論的に示されて、諸外国を中心に観光施設の事例等で分析が試みられている。しかし、日本において、現地で入場者調査が困難な農村公園を対象に、評価額の一致点と相違点を具体的データで実証した研究は見あたらない。 そこで本研究は、農村公園整備15地区(No.1からNo.15)のプーリングデータ(合体データ)をもとに、TCMによる評価額とCVMによる評価額の一致点と相違点を実証し、農村公園の評価に用いられるCVMの信頼性と、実際に評価を行う上での留意点を明らかにすることを目指したものである。
成果の内容・特徴
  1. 全国的に散らばって存在し、同じようなコンセプトで整備された農村公園15地区のプーリングデータを用いて分析のためのサンプル数を確保するとともに、地域間分散不均一性を考慮してTCMモデル(公園の年間利用頻度と利用コスト[距離×単位移動コスト]の関係を表す関数)及びCVMモデル(農村公園の保全・整備に対する仮想的な支払金額と支払の可・否の関係を表す関数)を推計する。
  2. TCMモデルでは、距離、家族数及び公園規模が利用頻度を通じて評価額に影響する要因であるのに対し(表1)、CVMモデルでは、所得や世帯主の年齢のような個人属性が支払意志額を通じて評価額に影響する要因である。一方、TCMモデルで有意な距離や公園規模は、CVMモデルでは有意な影響要因ではない(表2)。さらに、地域間の分散不均一性は、TCMモデルでは有意に検出される地区が多いのに対し、CVMモデルでは少ない。
  3. 表3に示すように、CVMによる農村公園の評価額(中位WTP:支払い意志額の中位数)は、利用頻度の高い世帯ほど高くなる傾向にある。この傾向は、利用頻度グループ毎の評価額における90%信頼区間が、隣接グループのそれとわずかしか重複しないことから、統計的な有意性も高い。また、現在は全く利用しない住民も、オプション価値(将来の利用に対する留保)や公園整備による動植物生息空間の確保等がもたらす存在価値を認めている。
  4. このようにCVM評価額は、利用頻度グループ間で異なるものの、利用者のみによる評価額(非利用者の評価額を0とした平均値)では、TCMの評価額とほぼ一致する(表3)。したがって、アンケート調査に基づくCVM評価も、利用行動を考慮して算定すれば、TCM評価と同等の評価が可能である。ただし、非利用者による農村公園の存在価値、オプション価値が無視できない場合は、両手法による評価額が乖離する。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究の結果は、行政部局が実施する農村公園のCVM評価に関し、その信頼性を第三者に対して説明するときに活用できる。
  2. 社会情勢等の影響により評価額が変化することも想定されるので、本研究で行ったような手法により、定期的な事後評価による確認が不可欠である。
図表1 228212-1.gif
図表2 228212-2.gif
図表3 228212-3.gif
カテゴリ コスト 評価法

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