| タイトル | 住民(農業生産者)参加型農村開発 |
|---|---|
| 担当機関 | 日本学術振興会外国人特別研究員 |
| 研究期間 | 2005~2005 |
| 研究担当者 | |
| 発行年度 | 2005 |
| 背景・ねらい | 日本政府は,1995年に策定された地方分権推進法以後,地方分権の確立を具現化するために地方への税源委譲を含む,国庫補助負担金縮減と地方交付税の見直しを内容とするいわゆる「三位一体の改革」を急いでいる。 一連の社会・経済的転換期を迎えて,今後地方自治体の自己努力とその対応如何によっては日本社会に大きな変化をもたらす可能性が高くなっている。 実際,一部の自治体は早くから地域独自的な政策の開発に全力を注いでいる。もちろん以前から地域全体の取組みは数多く存在していた。集落ごとの話合いを通して,地域問題を解決してきた歴史・文化的蓄積は無視出来ない。しかしこのような動きを組織・財源的にバックアップし運用した経験はほとんどない。もし組織的に何かを達成したとしてもほとんどの場合,一過性に終わることも考えられる。 本研究で取り上げるK町は農業において数々の難題を抱えながらも,地域全体の意見を集約し,地域独自の政策を実行しているところであり,組織的にも財源的にも非常に優れたシステムを確立している。さらに既存の地域農政の展開とは違う,住民参加型農政の確立を目指している農村地域である。 本研究では,農業を基盤とする地域の動向分析を通じて日本の稲作農家が置かれている現状とその打開策に関して具体的な戦略を提示したい。 分析方法としては,第1に,近年の新しい米政策を概観し,稲作地帯全体に与えた影響について考察を行う。第2に,これらの政策を受けて,事例対象であるK町が,如何にして住民参加型農業政策を確立し,地域の活路を見い出したかについて具体的に考察する。 |
| 成果の内容・特徴 |
しかし政府の農業政策の方針が地域の自主性に重きを置き,その方向性が徐々に変わっている。ここでは,そうした取組のうち,農業が地域産業の基盤となっている一つの地域を取り上げ,危機的な状況の農村地域が如何にして,再構築に成功したか,また成功の鍵となった生産者参加型政策手法とは何かについて説明したい。 そのツケが農業収入の減少としてあらわれ,農家経済は深刻な状態になっている。 行政としてもその対応をめぐり,新しい農業組職(振興事務所,のちに公社)を2000年に立ち上げ,外部の専門家との連携を通して新しい対応策に乗り出した。 第1表は2000年時点(一部の項目は1999年)のK町における農家経済の諸問題を示したのであるが,まず事例対象地域における経済状況について簡単に概略してみよう。 K町は,北海道でも代表的な水稲地帯に属しており比較的専業の比率が高い地域である。 農家戸数は 2000年度時点で 614戸であるが,最近 20年の間に農家戸数は31.7%減少しており,過去10年間に147戸が離農している。 これに相まって農業生産額は1994年の89億円をピークに,2000年には 68億円にまで低下した。これにより農業所得も同時期に 40億円から 25億円で減少した。 次は地域内の機械保有と農地価格現況についてみる。 1998年時点でのトラクター保有台数は1,326台,田植え機は 464台,コンバインは 506台を保有している。地域の農業現況を勘案しても明らかに過剰設備である。結局このような過剰設備は経営を圧迫する主要原因の一つとなっている。 さらに農地価格の推移をみると,1987年時点で田の平均価格は約67万円/反であったが,99年には約38万円までに下落した。結局,農地価格・標準小作料の下落などの要因が農地流動化の障害になっている。 これらの状況を踏まえて,K町の農業の特徴を整理すると,極めて個別,分散的な営農を基本としている。農業所得の減少でも分かるように,農村地域を取り巻く経済環境は極めて悪い状況である。 このような現実を深刻に受け止めた地域の政策担当者らは,地域農業基盤の脆弱性が経済悪化の状況を一層加速させていると判断し,具体的な対応策を検討し始めた。 まず農業・農外所得ともに過去に比べ大幅に低下していることが分かる。さらに 過剰な機械装備と重なり,個々の経営努力のみでは現況の改善は見込めない状況であり,残された道はただ一つ,地域全体としての取組みしかなかった。 第2表は作成されたデータの一部である。これらの資料の作成により,これまでの推論から脱皮して具体的な論議が可能となり,順次農家にその情報を還元したことは,「振興事務所」の存在意義を高める要因でもあった。 とくに農協が管理している個人営農に関わるデータは,農家の経営方式の違いや栽培技術などの詳細なデータとして整備され,農地委員会の協力によって30年にも及ぶ農地売買データも集約することが出来たのである。 これにより地域内の農地売買の行動による非経済的な行動様式が把握されると同時に,農地の有効活用と流動化促進のための基礎資料として活用することが出来た。また農民協議会の協力で,各農家の兼業所得の推移を把握することが出来,個人農家の経済的変化が農地移動,栽培作物の選択などに具体的にどのような影響を及ぼしているかについての多角的な把握が可能となった。 このような成果によって,地域の土地利用の形態がすばやく把握され,地域農業の問題と課題が農家に明確に提示されることになった。これを契機に公聴会が開催されることとなり,関係機関と生産者との間に本格的な意見交換が行われた。 結果,官・民の相互間の反省と対話を促進させる成果をもたらした。そして「農業振興事務所」を母体とする新しい組職に,農家代表が参加し,今後の地域振興計画を作成することで,地域からの同意を得ることに成功した。 一方で2000年度より5年間を目処に農業基金の構想が持ち上がり,生産者の同意が得られたことも特筆すべきことである。基金の総額は2億2千万円に上った。 さらに2005年より,振興事務所は,独自な機能を持った公社組織として再出発し,農地流動化など地域の懸案事業をより一層取組むことも出来た(第1図参照)。 また「農業振興事務所」の重要検討事項であった農業生産法人は,事務所設立に歩調を合わせた形で,農家8戸を中心に100haの農地を集約することに成功した。最終的には1集落1法人を目指しており,実現されれば高いレベルでの地域営農システムの完成に近づくと思われる。 本文中でも強調したように,生産者自ら参加し作成した地域農業政策のプロセスは多くの示唆と可能性を与えている。その中でも一番重要なことは,行政と生産者間の信頼を回復したことだと思われる。 生産者参加型の政策実現もその一つの手法に過ぎないが,第1図でも示されているように,K町は,地元の大学・研究機関と強く連携しており,事業を成功に導いている。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 図表3 | ![]() |
| カテゴリ | 経営管理 栽培技術 |
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