魚類体表の溶菌性プロテアーゼの発見

タイトル 魚類体表の溶菌性プロテアーゼの発見
担当機関 中央水産研究所
研究期間 1997~1998
研究担当者 荒西大士
発行年度 1998
要約 広くウナギ目魚類の体表組織内に保持されている生体防御プロテアーゼを発見した。さらに生体防御プロテアーゼによる魚病細菌の分解(溶菌)メカニズムを明らかにして魚類の体表粘膜における病原細菌の侵入阻止機構を推定した。
背景・ねらい 水中で生活する魚類は体表を粘膜組織で覆われており、そこには水からの病原体の侵入を防ぐ機能(生体防御能)が存在する。また、最新の研究では生体防御能だけでなく地球温暖化や酸性雨から発生する環境ストレスより体を守る機能(環境適応能)も兼ね傭えているのが明らかになっている。魚類体表の生体防御機構は病原体の侵入や環境ストレスに対して素早く反応する特徴をもつが、この反応は多くの分解酵素により進行している。これまで糖分解酵素や脂質分解酵素に関する研究が行われているが、主役であるタンパク分解酵素(プロテアーゼ)に関する研究成功例は未だない。この研究では、環境適応能が高く世界的な水産重要魚種であるウナギ目魚類から体表粘膜に分布する生体防御プロテアーゼを発見し、その生体防御能やストレス応答性を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. ウナギ体表プロテアーゼの検索と同定を行った結果、ニホンウナギ表皮組織に4種のプロテアーゼを発見した。これらの表皮プロテアーゼは種によって蛋白分解活性に差があるものの、多くのウナギ目魚類に保持されていることが判った。
  2. ストレス試験(温度、細菌感染等)で表皮プロテアーゼのストレス応答性と表皮組織の形態変化を調ぺた結果、表皮の粘液細胞と梶棒状細胞に分布する2種の表皮プロテアーゼ(カテプシン)がストレスに応答して分泌されていることが判った。
  3. ウナギ表皮から単離したカテプシンは多くの魚病細菌を溶菌し、その機構が細菌外膜タンパク質の分解であった。これらの結果から、魚類の体表粘膜での病原菌の侵入阻止は
    1. カテプシンの攻撃で外膜に穴が開いた病原菌が浸透圧作用で崩れる、
    2. 穴から他の生体防御因子が菌体内に侵入し溶菌作用を促す、
    によると推定した。
成果の活用面・留意点 現在、魚類の生体防御因子は増養殖現場で「健康指標」や「有用形質指標」として利用されている。しかし検出感度や定量性等多くの技術的問題を抱え適用範囲が限られている。一方、本研究で発見した体表プロテアーゼは微量かつ定量的に検出可能であり、この特徴を活用した稚仔魚や天然魚の再生産過程での「生残率指標」として適用を期待できる。
図表1 229088-1.gif
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