エゾアワビ浮遊幼生の変態および初期稚貝の成長に及ぼす小型植食性巻貝の影響

タイトル エゾアワビ浮遊幼生の変態および初期稚貝の成長に及ぼす小型植食性巻貝の影響
担当機関 青森県水産増殖センター
研究期間 1996~2000
研究担当者 伊藤秀明
清藤真樹
柳谷 智
発行年度 2000
要約 小型植食性巻貝エゾザンショウHomalopoma amussitatumは,エゾアワビHaliotis discus hannai浮遊幼生の変態を阻害する可能性が示唆され,さらに変態後のエゾアワビ初期稚貝と食性が類似し,餌料を巡る競合関係にあるものと考えられた。
背景・ねらい アワビ類浮遊幼生は紅藻無節サンゴモ上に特異的に着底・変態し,変態後の初期稚貝はサンゴモ上に繁茂する付着珪藻などを主餌料としている。サンゴモが優占する海底には,アワビ以外にも多くの植食動物が棲息しており,それらの摂餌圧はサンゴモ上の珪藻の量や種組成を規定している。本県沿岸のサンゴモ上に高密度で棲息する小型植食性巻貝エゾザンショウは(写真1),エゾアワビ初期稚貝と餌料を巡り競合している可能性がある。本課題では,エゾザンショウの存在がエゾアワビ浮遊幼生の着底・変態に及ぼす影響を解析し,変態後のエゾアワビ初期稚貝との餌料を巡る競合関係について検討した。
成果の内容・特徴
  1. 5L円形水槽の底面に無節サンゴモに覆われた直径5cm前後のの玉石を敷き,エゾザンショウまたは殻長15mm前後のエゾアワビ1歳貝を密度を変えて(0,5,10,40g/m2)収容し,その後,変態可能となったエゾアワビ浮遊幼生を投入し,幼生の変態率を測定した。エゾザンショウを収容した実験区では,エゾアワビ1歳貝区と比較して,浮遊幼生の変態率は低かった(図1)。
  2. 底面にスライドを敷いた5L円形水槽中に砂濾過海水を流し,スライドグラス上に付着珪藻を繁茂させた。これらの水槽にエゾザンショウまたは殻長15mm前後のエゾアワビ1歳貝を密度を変えて(0,5,10,20,40g/m2)収容した。その後,平均殻長483mmのエゾアワビ初期稚貝を1水槽あたり200個体になるように入れた。エゾザンショウを収容した実験区では,エゾアワビ1歳貝区と比較して,初期稚貝の成長速度が低かった(図2)。実験期間中,水槽内に繁茂していた付着珪藻の種組成を解析した。エゾザンショウ区では,巻貝密度が10g/m2を超えるとエゾアワビ初期稚貝の好適な餌料であるAmphora spp.およびCocconeis spp.の占める割合が減少した。一方,エゾアワビ1歳貝を収容した実験区では,巻貝密度が高い実験区でこれらの珪藻の占める割合が増加した(図3)。
  3. 本研究から,エゾザンショウの存在は,エゾアワビ浮遊幼生の変態を阻害する可能性が示唆された。また,エゾザンショウは,エゾアワビ初期稚貝と付着珪藻に対する摂餌選択性が類似し,5g/m2程度の分布密度でもエゾアワビ初期稚貝の餌料環境に大きく影響することが予想された。一方,エゾアワビ1歳貝は,エゾアワビ初期稚貝と食性が異なるため餌料を巡り競合することなく,40g/m2以上の生息密度でも同所的に生息する初期稚貝の成長に影響を及ぼさないことが推察された。
成果の活用面・留意点 天然環境下において,エゾアワビ初期稚貝とエゾザンショウの餌料を巡る競合関係の実態を把握する必要がある。
図表1 229187-1.jpg
図表2 229187-2.gif
図表3 229187-3.gif
図表4 229187-4.gif
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