タイトル | 人工海水を用いた閉鎖系循環種苗生産 |
---|---|
担当機関 | 屋島栽培漁業センター |
研究期間 | 2006~2010 |
研究担当者 |
荒井大介 山本義久 |
発行年度 | 2007 |
背景・ねらい | 環境保全の観点から水産増養殖分野における閉鎖系循環飼育が注目され,その効果として廃水を軽減できることや水質変動の軽減による初期減耗防除等の長所が考えられる。現在の閉鎖系循環飼育システム(図1)を用いたマダイの飼育技術では,換水率0.5%/日程度のほとんど換水しない飼育条件下でも,全長30mm種苗が生残率45%以上,生産密度7,000尾/kl以上の成績で,安定かつ効率的に種苗生産できることを明らかにしている。 一方,閉鎖循環飼育は閉鎖環境であることから病原体の侵入や悪い水質の外海水の取り込み等の外部リスクを防除する効果も期待されている。そのためには初期及び換水分に使用する海水の殺菌が必須であり,ウイルス病防除のためには高性能な殺菌装置の導入とそれによる生産コストの増大及び殺菌した海水中に溶解するオキシダントなどの毒性物質の除去の問題が残されている。閉鎖系循環種苗生産に人工海水を用いることは上記の問題が完全に払拭できる可能性があり,本研究では人工海水を用いたマダイの種苗生産について検討した。 |
成果の内容・特徴 | ろ過海水区と人工海水区をそれぞれ2水槽を設け,平均を比較した結果,ろ過海水区と人工海水区ともに成長・生残に全く差はなく,両区とも日齢40までの飼育で平均全長29.5mmの稚魚を生残率49.7%で生産することができた(表1)。また水質の変化もほぼ同様な傾向を示し(図2),人工海水のみでマダイの閉鎖系循環種苗生産が可能であることが判明した。今後,唯一の懸念材料である人工海水作成コストの削減を目的に,人工海水の塩類組成等の課題を解決できれば極めて有望な技術の発展が期待できると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | ・病原体や悪い水質の海水の混入等,取水海水由来の外部リスクを完全に払拭できることにより,安全な飼育環境を維持でき,薬を使用しない健全な魚の生産が可能となる。 ・大規模な取水装置と海水殺菌装置が不要となることから生産コスト削減に寄与する。 ・地下水等の淡水を充分確保できる条件がそろえば,飼育施設の立地場所が制限されないことから,陸上養殖の大きな問題である施設用地の確保並びに経費を軽減できる。 |
図表1 | 230000-1.pdf |
カテゴリ | 病害虫 コスト 飼育技術 防除 |