タイトル |
ソバ植物体の抗酸化能及び活性成分の推移 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
伊藤美雪
森 勝美
中村信吾
渡辺 満
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発行年度 |
2000 |
要約 |
ソバ植物体のポリフェノール量は、発芽直後が最も高く、抗酸化能は発芽直後と開花初期が高い。主要ラジカル消去成分として、子葉にはルチン、オリエンチン、イソオリエンチンが含まれるが、生育が進むにつれルチン以外のフラボノイドは減少し、子葉の消失とともにルチンのみとなる。
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背景・ねらい |
ソバ収穫後の植物体はかつて飼料として利用されたこともあるが、現状ではほとんど廃棄されている。それに対し、最近ではスプラウトとして様々な野菜の新芽が市場に出回っており、その中にはソバの新芽(もやし)も含まれている。ソバ植物体には機能性成分として、種子よりも高含量のルチンが含まれていることが知られているものの、発芽直後からのポリフェノール量及び組成、抗酸化能の変化については明らかにされていない。そこで、発芽後のソバ植物体の抗酸化能、抗酸化成分の生育ステージにおける変動を明らかにし、活性成分を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- ソバ2品種(階上早生、信濃1号)を、発芽後43日まで複数回サンプリングし、これを材料としてメタノール抽出物を得た。抽出物中のポリフェノール含量は発芽直後が最も高く、15日まで低下する。その後開花初期の23日まで上昇し、以降は低下傾向を示す(図1)。
- DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去活性はポリフェノール量と同様の変動傾向を示すが、発芽直後と23日後の活性は同程度である(図2)。
- 発芽直後の植物体抽出物のHPLCクロマトグラムでは5つの主要ピークが確認されるが、以降4ピークの面積が減少し、19日にはルチンのみが検出されるようになる(図3)。これ以降、クロマトグラムに大きな変化は認められない。
- 発芽後4日(大部分子葉)のソバ植物体(岩手在来)のメタノール抽出物から、電気化学検出器(+300mV)による分析で、抗酸化性を有することが確認されたルチン以外の2ピークを、クロマトグラフィー、分取HPLCにより単離し、NMR等の機器分析により同定した。その結果、化合物1,2は、それぞれグリコシルフラボンのオリエンチン、イソオリエンチンと同定された(図4)。また、抗酸化性は認められなかったが、化合物3および4は、紫外吸収スペクトルを含むHPLCクロマトグラムのデータから、既にソバ殻(果皮)から単離しているビテキシン、イソビテキシンとそれぞれ同定された。
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成果の活用面・留意点 |
- ソバ植物体を機能性食品素材として活用するための基礎資料となる。
- 植物体中のアントシアニン含量も発芽直後が最も高く、生育につれて減少することを確認しているが、定量法について現在検討中。
- ソバの栽培は露地で行っており、通常のモヤシの栽培条件、すなわち施設内での加温・遮光栽培とは、温度・光の条件が異なる。従ってモヤシ栽培では、ポリフェノール含量、及び抗酸化能が異なることが考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
機能性成分
栽培条件
機能性食品
そば
品種
もやし
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