受粉樹制約と作業別熟練度を組み込んだリンゴ作経営モデル

タイトル 受粉樹制約と作業別熟練度を組み込んだリンゴ作経営モデル
担当機関 東北農業試験場
研究期間 2000~2000
研究担当者 角田 毅
宮武恭一
折登一隆
長谷川啓哉
発行年度 2000
要約 リンゴ作経営の特殊性を考慮して受粉樹制約と作業別熟練度を組み込んだリンゴ作の線形計画経営モデルを構築した。
背景・ねらい リンゴは東北の主要果樹であるが、リンゴ価格の下落により収益が悪化しており、所得確保のため規模拡大や新技術導入などが求められている。それには受粉樹、作業熟練性が制約要因となっているが、これらを組み入れたモデルはない。そこで、リンゴ作で特徴的な受粉樹制約や作業熟練度を組み込んだ線形計画経営モデルを構築する。
成果の内容・特徴
      
  1. マメコバチ、ミツバチなどによる虫媒受粉の普及により近年園地が混植状態となっている。リンゴは自家不和合性が強く同一品種による受粉が困難なため、他品種の植栽を必要とする。そこで最も収益性の高い「ジョナゴールド」、「ふじ」の植栽面積は、品種間の受粉適格性を考慮して、(1)「ジョナゴールド」の植栽面積は、「ふじ」と「ジョナゴールド」との合計、および「つがる」、「王林」、「ジョナゴールド」の合計それぞれ7割以下、(2)「ふじ」の植栽面積は、「ふじ」、「つがる」、「王林」の合計の8割以下になるように、受粉樹制約(品種比率制約)を設定した(表1、制約式1~3)。
      
  2. JA江刺市リンゴ部会を対象としたアンケート分析の結果(表2)から、手作業の多いリンゴ作では熟練度の水準が3段階に分類できた。そこで熟練度別の労働力制約を設定した(表1、制約式4~118)。
      
  3. 比例利益最大を目的関数とし、上記の受粉樹制約、熟練度別の労働制約を取り入れた植栽面積不定の線形計画モデル(使用ソフトは農研センター大石亘氏開発のXLP)を構築した(表1)。
      
  4. 上記モデルを用い、夫婦一世代経営(男《熟練度高》、女《同中》各1人)を対象に、江刺産地の事例で、熟練度別の雇用条件と上限規模、期待所得の関係、および他産業並所得を得るための下限規模との関係を分析した。その結果、上限規模と期待所得は、(1)雇用を全く導入しない場合はそれぞれ約1.3ha、222万円(ケース1)、(2)熟練度低の雇用のみ導入する場合はそれぞれ約2.6ha、669万円(ケース2)、(3)熟練度低・中の雇用のみ導入する場合はそれぞれ約2.6ha、668万円(ケース3)となった。さらに下限規模約3.9ha(期待所得875万円)に達するには(ケース4)、新興産地である江刺産地では確保が困難とされる熟練度高の雇用1名の確保が必要となることが明らかになった(表3)。
      
  5. ケース3を例として、熟練度制約を除くと、熟練度高・中の労働力制約を受けなくなること、雇用賃金が低くなることにより、期待所得は990万円と322万円過大に算出される(表4)。また受粉樹制約を除くと、「つがる」が減少し、「ジョナゴールド」、「ふじ」が増加することにより、期待所得は746万円と78万円高く算出される。このように熟練度制約、受粉樹制約はそれぞれ有効であり、熟練度制約の方が所得に大きな影響を及ぼすことが示される。
成果の活用面・留意点
     
  1. 価格条件では、江刺産地は高単価産地(87年~96年平均で全国より19%高い《東京中央卸売市場年報、JA江刺市資料》)である。
図表1 231753-1.jpg
図表2 231753-2.jpg
図表3 231753-3.jpg
図表4 231753-4.jpg
カテゴリ 規模拡大 経営管理 経営モデル 受粉 新技術導入 品種 ミツバチ りんご

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