タイトル |
イネの第6染色体に座乗する障害型耐冷性遺伝子の詳細な位置 |
担当機関 |
青森県農林総合研究センター |
研究期間 |
2002~2003 |
研究担当者 |
須藤 充
神田伸一郎
坂井 真
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発行年度 |
2003 |
要約 |
ジャワ型品種「Pakhe Dhan」に日本稲を戻し交雑した雑種集団を用いて、第6染色体上の約4.2cM間の領域に、「Pakhe Dhan」由来の障害型耐冷性遺伝子が存在することを明らかにした。この遺伝子を導入すると、低温処理時に稔実率が向上する。
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キーワード |
イネ、DNAマーカー、QTL、耐冷性、Pakhe Dhan、第6染色体
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背景・ねらい |
寒冷地稲作において耐冷性は重要形質であり、冷害を克服するために、高度耐冷性を持つ優良品種の育成が強く望まれている。近年のイネゲノム解析の進展により、DNAマーカーを用いた遺伝子の探索、導入が可能となり、様々な形質について試みられている。本研究では、高度耐冷性を持つ「Pakhe Dhan」由来の、数個の耐冷性に関する量的形質遺伝子座(QTL)のうち、第6染色体に検出したQTLの座乗位置の決定を行った。
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成果の内容・特徴 |
- ネパール原産のジャワ型品種「Pakhe Dhan」に日本型系統「ふ系175号」を戻し交配した後代を用い、「Pakhe Dhan」由来のQTLを第6染色体上のDNAマーカーFP0621付近に検出し、qFLT-6(QTL controlling Fertility under Low Temperature on chromosome 6)と命名した(表1、図2)。
- 遺伝子背景が「ふ系175号」で第6染色体上のDNAマーカーFP0611~FP0605の領域のみが分離する集団を用いた解析により、qFLT-6はDNAマーカーFP0612とFP0613の間、約4.2cMに座乗することが明らかになった(図1)。
- qFLT-6は、供試集団の解析より、低温処理時に稔実率を20%程度向上させる作用を持つと推定される(推定値はMapmaker/QTLの算出による、表1)。
- 遺伝子背景が「ふ系175号」で、第6染色体のqFLT-6を含む領域をやや広く「Pakhe Dhan」型に持つ、03PM138(図1)では、出穂期、稈長、収量等はほぼ「ふ系175号」と同じだが、恒温深水法による耐冷性検定において、稔実率では約20%、耐冷性のランクは「ふ系175号」を2ランク上回った(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- qFLT-6は障害型耐冷性の向上に有用な遺伝子と考えられ、その効果を実証するためにqFLT-6近傍領域のみを「Pakhe Dhan」ホモ型にもつ同質遺伝子系統を現在育成中である。
- qFLT-6を「ふ系175号」以外の品種・系統に導入した場合の効果については未検討である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
DNAマーカー
凍害
品種
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