タイトル | 桑葉に含まれる血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシン量を高める調製加工法 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2004~2005 |
研究担当者 |
宮澤陽夫(東北大) 後藤裕子(福島県ハイテクプラザ) 山岸賢治 小島芳弘(ミナト製薬) 仲川清隆(東北大) 木村俊之 野木照修(福島県農試) 鈴木雅博 老田茂 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 1-デオキシノジリマイシン(DNJ)は、桑葉に含まれる血糖値上昇抑制物質である。製品中のDNJ含量は、DNJを高含有する桑葉原料とDNJ損失の少ない加工法を組み合わせることにより、従来製法に対し約10倍に高めることができる。 |
キーワード | 桑、血糖値上昇抑制物質、1-デオキシノジリマイシン、DNJ |
背景・ねらい | 近年、α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)が、食後の高血糖及びインスリン過分泌を抑制することで2型糖尿病発症を予防しうることが示され、α-GI 食品が注目されている。桑葉は1-デオキシノジリマイシン(DNJ)と呼ばれるブドウ糖の構造類似物質を含み、強力なα-GI作用を有するため、α-GI食品素材として注目される。DNJは定量が困難であり、DNJを生かす桑葉の商品開発は十分には行われていなかった。そこで、我々は光散乱検出器と親水相互クロマトグラフィーを組み合わせたDNJの定量法1)(HILIC-ELSD法)を開発した。これを活用し、DNJを高含有する桑葉食品を製造開発することを目的とする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 桑葉原料のDNJを高含有させるためには、以下の素材条件を満たす必要がある。 1) 品種:「鶴田」「はやてさかり」は現在の主原料である「一ノ瀬」「改良鼠返」よりも高含有するため(図1)、これらDNJ高含有品種を使用する。 2) 葉の採取部位:枝先端部の葉はDNJを高含有するため2)、枝先端部の葉(枝先端より30cm以内の葉が望ましい)を使用する。桑茶用の栽培を行い、茶刈機を使用することにより効率的に採取することが可能である(図2)。 3) 葉の採取時期:6、7、8、9月の葉では8月の葉が最もDNJを高含有するため2)、 8月の葉を使用する。 2. 加工工程のDNJ損失をなるべく抑制するためには、以下の条件を満たす必要がある。 1) ブランチング:DNJは溶脱しやすく煮沸処理では大きく損失するため、高温蒸気処理によるブランチングを行う(図2)。 2) 製茶法:乾燥工程ではDNJが若干損失するが、経済上の理由により熱風乾燥が良く、緑茶用の製茶機が活用できる(図2)。 3) エキス抽出法:100、75、50、25、0%の比率のエタノール/水抽出溶媒のうち、25%エタノール/75%水で抽出するとDNJが最も高濃度で抽出される(図3)。 3. 1,2の条件を満たすことにより、DNJを桑茶で約5倍、エキスで約10倍、従来製品よりも高含有する製品製造が可能である(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. DNJを高含有する製品開発のためには、上記の条件がすべて揃っていることが望ましいが、製造現場の状況に合わせ一部条件が満足されてなくとも、従来製法よりもDNJを高含有する製品製造が可能である。 2. DNJを高含有する桑葉食品の開発により新たな需要が喚起され、遊休桑園の解消と、中山間地域に新たな産業をおこす基盤となることが期待される。 3. 商品にする場合には、関係法令に基づいた手続きが必要である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 加工 乾燥 桑 茶 中山間地域 品種 |