タイトル | 栽培槽に水抜きを設けないエブ&フロー方式装置によるトマト苗生産技術 |
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担当機関 | 園芸経営研究室 |
研究期間 | 2002~2004 |
研究担当者 |
伊吹俊彦 角川 修 笠原賢明 東出忠桐 迫田登稔 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 開発した装置は、自作装置によるトラブルを回避するため給排水兼用管を備えて栽培槽に水抜きを設けないものであり、水漏れ等のトラブルは少ない。これにより中山間傾斜地のトマト育苗が容易となり、コスト削減及び夏秋期の平地への苗供給が可能となる。 |
キーワード | 傾斜地、養液栽培、トマト、育苗、コスト、サイフォン |
背景・ねらい | エブ&フロー方式の育苗は、鉢物栽培等では広く用いられているが、市販の装置は高価なため、小規模で育苗時期が限られる野菜栽培では普及していない。この原因のひとつは、自作装置では施工の不備によって水が漏れたり、あふれたりトラブルが生じることにある。一般にエブ&フロー式装置では、栽培槽に水抜きを設け、水位センサを用いて給排水を行うことが多いが、水量の変化、配管中のエアーかみ、センサの誤作動によるトラブルがあり、生産者が安心して受け入れ、自ら作成して導入する技術には至っていない。そこで、装置の自作が容易で、これまでの装置のトラブルの原因である水抜き方法及び生育ムラを改善した育苗方法が求められている。これらの改善により中山間傾斜地における育苗技術を開発して苗のコストダウンとトマト栽培の安定化を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1. 開発した育苗装置は栽培槽、水中ポンプ、給排水管、架台から構成され、苗底部から培養液を間欠的に給液するもので、容易に自作できる。サイフォン原理を利用した給排水兼用の管で給排水を行い、栽培槽に水抜き穴を設けないために水漏れの危険がなく、タンク容量を栽培槽容量よりもやや少なくしてオーバーフローが防止される。また、給排水管を培養液タンク内で枝分かれさせることで給水中にタンクが空にならず、ポンプの空回りが防止される(図1)。 2. 本装置による育苗には、ロックウールポット(5~10cm角)や培養土を入れた9cm径ポリポットを用い、24時間タイマによりポンプのオンオフを行い、1日4~6回、園試処方50%濃度培養液等の給液を行う。必要な作業は、鉢上げ以外には培養液の残量の確認と生長に伴うスペーシングだけであり、省力的である。 3. 播種時期及び育苗期間は日平均気温の積算と葉数の関係式(葉数=0.2736・e0.0041・積算気温、R2=0.96)より算出できる。中山間傾斜地である徳島県三加茂町(標高300m以上)において、4月中旬に5~6葉期のトマト苗を定植する場合、播種時期は2月下旬となる(図2)。 4. 購入接木苗と本装置による育苗とのコストを比較したところ、苗数が約900株以上、すなわち、定植面積が約4a以上の場合に、本装置による育苗が有利となる(図3)。 5. 中山間傾斜地における本装置による育苗は、夏秋トマト栽培だけでなく、冷涼な夏秋期の気候を利用して、平地暖地の促成栽培用の苗供給を可能にする(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 300株程度のトマト苗を育成できる栽培槽の大きさは90×360cm程度であり、装置の総資材費は約5万円、製作時間は2人・時である。 2. 低温期には培養液タンク内に投げ込みヒーターを入れ、水中ポンプを制御する単極双投式(C接点方式)タイマに接続する。これにより給水時にヒーターがOFFとなり、ヒーター空焚きによるタンク及びヒーター破損が防止される。 3. 本装置による育苗において、装置に起因するトラブルはこれまでない。また、トマト育苗だけでなくメロンやセルリーの育苗にも利用実績があり、その他の作目にも利用できる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 育苗 傾斜地 コスト 栽培技術 セルリー 中山間地域 トマト 播種 メロン 野菜栽培 養液栽培 |