タイトル |
コストマネジメントによる新子牛生産技術の事前評価 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1990~1991 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1991 |
成果の内容・特徴 |
- 技術・情報の内容及び特徴
【背景・ねらい】 牛肉輸入自由化以降、乳用種、日本短角種などを中心に、素牛価格の暴落と 低迷が続いている。このような条件の下で、F1生産、受精卵移植、体外受精など の新子牛生産技術の開発と導入が注目されている。しかし、導入の緒についた ばかりの新技術には、技術的・社会的な不確定要素が少なからず含まれるため、 その事前評価には、係数的評価と並んで、対象農家の経営志向と現場の事情に 照らした評価が重要である。 【情報の内容・特徴】
- コストマネジメントによる新生産技術の評価は、図1に
示したように、経営にとっての目標を探査し、次にその目標達成のため、具体的手段を 探査し決定する手順を取る。このため、不確定な要素を含む開発技術を導入前に 評価し、導入方法についても検討するという事前評価の目的に合致する。ここでは 新子牛生産技術について、コストマネジメントによる評価の特徴である1~3の段階を 以下に例示した。
- 酪農経営は、子牛価格の暴落、乳価の低迷という条件の下で、大きくふたつ
のタイプに分化してきている。このうち、牛乳生産重視型の経営では、自家の 基礎牛などから遺伝的に優良な受精卵を採卵し、不良系統の牛に移植する 方法で牛群改良を行なうことに主な関心が向いている。一方、生体販売重視型 の経営では、体外受精・受精卵移植による和牛の借り腹生産は、価格の良い 子牛を生産する方法として期待されており、ドナーにする目的で和牛を導入する 農家さえ現れている。新子牛生産技術は、このような経営志向を踏まえて評価 される必要がある。
- その場合、評価のポイントは、A.受精卵供給システムの評価、B.新旧の子牛
生産システムの比較評価、C.後継牛確保を前提とした移植可能頭数の把握 の3つがある(図3)。 技術普及上、現時点で最も制約となっているのは、必要なドナー・卵巣や技術 スタッフの確保による受精卵供給システムである。この点は、とくに広く普及を意図して 農協などの地域内給体制を取ろうとする場合に大きな制約条件となる。 またBに関して農家は、
- 受精卵の生産が多労
- 優れた系統の受精卵が入手困難
- 受胎率が低い
- 子牛哺育が手間
- 肉牛用飼料についての知識不足
- 和牛登録が不備
- 和牛農家の反発がある
などが技術導入に向けてクリアすべき条件として指摘している。 これらA、Bに関する問題がクリアされ技術が普及段階に入れば、次に搾乳牛として 残す後継牛確保を前提として、どれだけの子牛に開発技術が適用可能かが 問題になる。
- 技術・情報の適用効果
技術的・社会的な不確定要素を含む新子牛生産技術が経営志向に照らして 評価され、農家の求める技術普及や技術開発の方向の提示が期待される。
- 適用の範囲
酪農地帯。体外受精・受精卵移植事業を推進する農協・役場・公社等。
- 普及指導上の留意点
図2、3は、 酪農の規模拡大が進行する中で、受精卵移植事業が試行されている岩手県 金ヶ崎町の事例であり、実施上は、図1に示した手順で適用地域における社会経済条件ならびに経営志向や現場の事情 を踏まえた評価を行なう必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
規模拡大
経営管理
コスト
受精卵移植
肉牛
乳牛
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