タイトル |
飼料イネの導入とコントラクターの設立を通じた耕畜連携組織の形成条件 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
恒川磯雄
山田明央
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発行年度 |
2009 |
要約 |
飼料イネとTMRを結合した耕畜連携にはコントラクター組織の形成とその経営安定化が課題となり、そのためには初期段階での事業規模の確保、耕種側が生産継続できる取引条件の設定、畜産側でのTMRセンターの活動単位の取り組みとWCS利用への理解形成が重要である。
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キーワード |
飼料イネ、WCS、TMR、コントラクター、耕畜連携
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背景・ねらい |
混合飼料(TMR)供給センターは酪農経営に対する支援組織としての役割が増しているが、府県では自給粗飼料の利用が不十分な場合が多く、地域内の粗飼料資源との結合が課題となっている。これへの対応として、飼料イネを導入し、堆肥利用も含めた酪農地帯と水田地帯とを結合することが有力な方向となるが、こうした耕畜連携には収穫調製作業を担う地域体制の整備が不可欠である。そこで、代表的酪農地帯である栃木県那須地域において、TMRセンター、生産者、研究機関等の協力・支援のもとで、新技術の導入によって耕畜連携活動を開始した事例に基づき、特に取り組みの初期段階におけるコントラクター組織の設立過程と管理運営の実態を分析し、耕畜連携の成立条件を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- コントラクター組織(株)NMを中心とした地域体制は図1のとおりである。NMの構成員は耕畜双方の農業者とTMRセンター、関係会社で、うち農業者の出資が78%を占め、運営管理は主にTMRセンターと中心的酪農家が担っている。また、既に稼動していたTMRセンターの下で飼養技術の改善に取り組む酪農家集団(利用者懇談会)の組織活動は耕畜連携の形成の上でも重要な役割を果たしている。さらに、耕種側がコントラクター組織の設立段階から積極的に関わることで耕畜間の連携・調整を円滑にしている。
- NMによる収穫作業は飼料イネを中心に2007年の7haから08年51ha、09年88haへと短期に拡大している(表1)。この背景には収支均衡と機械投資回収によるNMの早期の経営基盤確立を意図した次のような取り組み方針がある。(ア)NMが生産・販売するWCS(ロールサイレージ)の原料となる飼料イネの持続的生産を確保するため、従量制買い上げを行い、転作助成と併せた耕種側の実質所得を3~5万円/10a程度とし、水田作担い手経営のメリットを創出する(表2)。(イ)事業規模確保にはWCS供給先の拡大が必要なため、一帯の酪農家からできるだけ注文をとり、この結果生じる供給不足は外部からの購入で補う。(ウ)組織運営の経済性確保のため、畜産側が購入するWCSの実質負担は48~58円/DMkgとやや高い水準であるが(表2)、これは将来へ向けた事業継続条件と製品品質の確保を前提に「値ごろ感」を意識して設定したものである。以上により収支を均衡させている(表3)。
- 畜産側にとってWCSの利用は濃厚飼料の変更をもたらすが、短期的なコスト低減効果は小さい(表2)。にもかかわらずWCS利用が拡大しているのは、中期的な見通しと総合的な判断・理解(今後のNMの事業拡大によるWCS価格低下の可能性、堆肥利用の拡大、輸入飼料価格の不安定性、地場産飼料の活用による消費者の理解への期待、循環型農業確立への意識など)があるためである。
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成果の活用面・留意点 |
- 対象地域ではWCSとTMRは農場段階で併用され、両者の組み合わせに対する生産者の評価は高い。WCSのTMRへの原料利用と堆肥利用拡大は今後の課題であるが、こうした初期段階でのコントラクターの事業規模確保を優先した手順は組織育成に効果的である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
経営管理
コントラクター
水田
低コスト
乳牛
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