タイトル |
多収技術による飼料イネ生産利用コストの低減と収益向上効果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
千田雅之
草佳那子
石川哲也
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発行年度 |
2009 |
要約 |
晩生専用品種を用いて多肥栽培を行い細断型機で収穫を行うと、稲発酵粗飼料の生産コストは慣行体系より約41%低減するが、収益向上には専用品種や細断型機の導入が効果的であり、多肥多収による収益向上には販売単価を高める取り組み等が必要である。
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キーワード |
飼料イネ、晩生専用品種、稲発酵粗飼料、多収技術、専用収穫機、放牧
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背景・ねらい |
飼料イネの生産利用の普及には、生産物の評価向上とともに生産コストを低減し収益の向上を図ることが必要である。そこで、コスト低減が期待される飼料イネ専用品種、多肥栽培、収穫ロスの少ない自走式細断型飼料イネ専用収穫機(S型機)の導入等の多収技術を取り上げ、各技術のコスト低減効果、及び収益向上効果を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 晩生専用品種の導入により飼料イネの圃場生産量は乾物400kg/10a以上増加し、稲発酵粗飼料1kgあたり生産コストは約25%低減する(表1)。また、晩生専用品種の多肥栽培により圃場生産量は約1,900kg/10aまで増加するが、多肥多収による生産コストの低減は最大8ポイント程度である(表1の2と5)。さらに、収穫ロスの少ないS型機で収穫すると、フレール型ロールベーラ(F型機)の収穫と比べて、生産コストは9ポイント前後低減する。この結果、晩生専用品種を用い堆肥2t+窒素12kg(堆肥2t・N12kg)の多肥栽培を行い細断型機で収穫を行うと、稲発酵粗飼料の生産コストは慣行体系の115円/kgから68円/kgに約41%低減する。
- 生産コストが多収技術により低減しても、販売単価を上回る水準にある以上、生産者の収益は向上するとは限らない。たとえば、F型機で収穫し40円/kgで販売するケースでは、コスト低減の最も顕著な堆肥2t・N12kgの多肥多収栽培よりも、堆肥2t・Nなしなどの減肥栽培の方が収益向上効果は大きい(表2)。一方、S型機で収穫し50円/kgで販売するケースでは、堆肥6t・N12kgの栽培を除き、多肥多収栽培の収益向上効果が顕著になる。 このことから、多肥多収技術の導入を促すには、収穫ロスの少ないS型機の導入、生産物の販売単価を引き上げるための品質管理や販路開拓が必要である。
- 牛への給与および堆肥処理を含む飼料イネの生産利用コストは、晩生専用品種を用いた多収栽培により低減するが、F型機およびS型機で収穫し牛舎に運んで給与する場合は、流通乾草の購入・利用コストを上回る。S型機で収穫し圃場で給与するケースでは、晩生専用品種を用いた多収栽培により流通乾草の購入・利用経費を下回る。飼料イネの放牧利用による生産利用コストは、堆肥2t・N12kgの多収栽培により44円/kgまで低下する(図1)。このことから、専用品種や多肥栽培による多収技術の経済効果は放牧など収穫利用方法の簡素化により顕著に発揮される。
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成果の活用面・留意点 |
- 飼料イネ単作地帯において、専用品種や多肥多収栽培技術の導入、専用収穫機の選択による飼料イネ生産の収益改善を検討する際に活用できる。
- 谷和原圃場及び茨城県の営農現場で得た技術、費用係数をもとに試算した結果である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
コスト
収穫機
多収栽培技術
低コスト
品種
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