タイトル |
極早生の飼料イネ用新品種「なつあおば」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
1999~2009 |
研究担当者 |
三浦清之
笹原英樹
後藤明俊
重宗明子
長岡一朗
上原泰樹
太田久稔
小牧有三
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発行年度 |
2009 |
要約 |
「なつあおば」は極早生の多収系統で、熟期の異なる稲発酵粗飼料用品種との作期分散による収穫期拡大により、刈り遅れによるサイレージ品質の低下を防ぐことができる。
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キーワード |
イネ、飼料イネ、極早生、稲発酵粗飼料、新規需要米、多収、なつあおば
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背景・ねらい |
食料自給率の向上および耕作放棄地の利活用を目的とした稲発酵粗飼料用等新規需要米としての水稲の作付が推進されている。特に、稲麦二毛作地帯では、作付面積拡大に伴う作業遅延はサイレージの品質低下ばかりでなく、後作小麦の播種の遅れが収量及び品質低下の要因となり、飼料イネの導入及び普及定着の妨げとなっている。そのため、収穫期拡大が可能な極早生の稲発酵粗飼料用品種の導入が望まれている。
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成果の内容・特徴 |
- 「なつあおば」は極早生の稲発酵粗飼料用品種の育成を目的として早生の稲発酵粗飼料用品種「北陸187号(後の「夢あおば」)」と早生の多収品種「アキチカラ」の交配後代から育成された多収品種である。
- 出穂期は「アキヒカリ」より1日程早く、黄熟期は5日程早い。育成地での熟期は“極早生”に属する(表1)。
- 稈長は「アキヒカリ」より12cm程長く“長”、穂長は「アキヒカリ」より長く“やや長”、穂数は「アキヒカリ」より少ない “やや少”で、草型は“穂重型”である(表1)。
- 湛水直播栽培における苗立ち率は「アキヒカリ」に優り、耐倒伏性は同品種より強い“強”であるため、湛水直播栽培に適する(表1)。
- 黄熟期乾物重は、移植栽培、湛水直播栽培ともに「アキヒカリ」より重い(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子はPibを持つと推定され、変異菌の接種検定では葉いもち圃場抵抗性は“強”と判定される。穂いもち圃場抵抗性は不明である。穂発芽性は“やや易”、障害型耐冷性は“弱”である。縞葉枯病に対しては抵抗性である。
- 埼玉県における現地試験の結果、なつあおばと収穫時期の異なる既存品種の組み合わせにより、5日程度収穫期間を延長することができた(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 適応地域は「アキヒカリ」等の熟期の作付が可能で、冷害の危険性の少ない東北中北部、北陸および関東以西である。
- 熟期の異なる稲発酵粗飼料用品種との作期分散により、刈り遅れによるサイレージ品質の低下を防ぎ、飼料イネ収穫機械の効率的運用が可能になる。
- 穂数が少ないので、分けつ数を確保するために、一般食用品種よりも増肥する必要がある。しかし、極端な多肥栽培では倒伏する可能性もあるため、地力に合わせた施肥を行う。
- Pibのいもち病真性抵抗性遺伝子を持つため、現在のところ、いもち病の発病は認められないが、いもち病菌の新レースの出現による発病の可能性があるため、発病が認められた場合、稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアルに従って、直ちに防除を行う。
- 障害型耐冷性が弱いため、冷害の危険のある地域での栽培は避ける。
- メイチュウの害を受けやすいので、適宜防除に努める。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
病害虫
いもち病
小麦
直播栽培
縞葉枯病
収穫機
飼料用作物
新品種
水稲
施肥
抵抗性
抵抗性遺伝子
凍害
二毛作
播種
品種
防除
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