リンゴ「ふじ」の果梗および種子中元素組成に基づく日本産と外国産の判別

タイトル リンゴ「ふじ」の果梗および種子中元素組成に基づく日本産と外国産の判別
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2005~2008
研究担当者 井上博道
梅宮善章
喜多正幸
中村ゆり
発行年度 2009
要約 果梗および種子中の元素組成を用いる多変量解析から、日本産と外国産のリンゴ「ふじ」を高い的中率で判別することが期待できる。同様に国内の主要産地の判別も可能である。
キーワード 産地判別、元素組成、判別分析、ICP発光分析
背景・ねらい 近年、日本からのリンゴの輸出が増加している。農産物の産地表示の偽装が国内で問題になっているが、海外市場においても産地の偽装が懸念されており、適切な産地表示が求められている。表示の真偽判定には、科学的根拠に基づいた判別手法が不可欠である。これまで、ウメやニホンナシの産地判別技術を開発している。同様の技術を用いることにより、リンゴの果実中の元素組成から日本産と外国産ならびに国内主産地内の産地を判別する手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 「ふじ」の果梗と種子を採取し、それぞれ硝酸で分解後、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置で13元素を定量し、あらかじめ作成しておいた各産地の判別基準に当てはめることで産地を判定する。果梗、種子は果皮や果肉よりも元素濃度が高いため、産地判別の測定部位に最適である(表1)。
  2. 「ふじ」の果梗および種子中各7元素を用いた判別分析では、日本産と外国産(韓国産、アメリカ産、中国産)の判別的中率は96.1%である(図1)。外国産の中で判別を試みたところ、果梗中10元素と種子中8元素を用いた正準判別分析により、97.5%の的中率で判別される(データ略)。
  3. 主な輸出先である台湾市場で競合する日本産、韓国産、アメリカ産の場合、果梗と種子中の各7元素を用いた正準判別分析では98.9%の的中率で判別される(図2)。
  4. 国内産地を判別する場合、果梗中9元素と種子中9元素を用いた判別分析によって青森県、長野県およびその他の県(秋田、茨城、岩手、福島、山形)の「ふじ」が高い的中率で判別される(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 判別基準の信頼性確保のため、定期的に産地の確かな「ふじ」を入手して分析を行い、判別基準を見直す必要がある。また、本基準は「ふじ」の現在の輸出先の状況を反映したものであり、他の産地判別に使用する場合には判別基準を再構築する必要がある。
  2. 本手法は他品種にも適応可能であるか、同様の方法で判別基準を作成する必要がある。
  3. 食品表示のチェックを行っている行政機関等で利用可能である。
  4. 判別分析で作成された判別関数式に果梗および種子の元素濃度を代入することで判別得点(判別関数値)が得られ、その値から産地を判定する。図1の線形判別分析では判別得点が0以上のものは日本産、0未満では外国産と判定される。図2、3の正準判別分析では2つの判別関数式から得られた判別関数値のプロットから産地が判定できる。
  5. 開発した産地判別技術による未知サンプルを用いた妥当性の検討は行っていない。
図表1 233813-1.png
図表2 233813-2.png
図表3 233813-3.png
図表4 233813-4.png
カテゴリ うめ 品種 輸出 りんご

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