タイトル |
エネルギー収支・経済性・環境負荷からみたバイオマス利活用シナリオの評価法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2007~2011 |
研究担当者 |
清水夏樹
柚山義人
中村真人
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発行年度 |
2009 |
要約 |
都市近郊農畜産業地域の地域性やバイオマス変換技術の導入可能性に基づいてバイオマス利活用を推進するためのシナリオを作成し、エネルギー収支、支出・収入、温室効果ガス排出量を現状と比較することにより、シナリオの評価が行える。
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キーワード |
エネルギー収支、経済性、温室効果ガス排出量、資源作物栽培、メタン発酵
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背景・ねらい |
都市近郊農畜産業地域では、バイオマス利活用によって水田の有効活用、環境負荷の軽減や営農コストの低減等が期待される。また、新たなバイオマス利活用の取組によりエネルギー収支や経済性が現状よりも改善されることが望まれるが、利活用には収集運搬、変換、利用の各段階において多大なコストやエネルギー消費を伴うため、これらを含めたシステム全体での評価が必要である。そこで本研究では、バイオマス利活用システムで想定される技術や物質の移動をシナリオとして作成し、システムの各段階における消費・産出エネルギー、支出・収入、温室効果ガス排出量を試算し、現状と比較する評価法を示す。
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成果の内容・特徴 |
- 実際のバイオマス利活用システムでは、利害関係の異なる主体が各段階を担う、と考えられるため収集運搬,変換等の各段階を「ステージ」として分けて分析する。ステージ別に評価項目を試算することにより、各ステージにおける留意点やシステム全体を円滑に運営するために必要な事項が明らかとなる。
- 直接エネルギー消費・間接エネルギー消費・産出エネルギーからエネルギー収支を、支出・収入から経済性を、二酸化炭素排出量に換算した温室効果ガス排出量(GHG排出量)から環境負荷を、ステージ別に試算し、評価する(表1)。試算に用いる基礎的数値などの情報は、発表論文等に詳細に示されている。
- バイオマス利活用シナリオの評価の手順や方法を示すため、評価例として、千葉県香取市を対象として水田の有効活用を目標としたシナリオA(活用可能性の高い休耕田において多収米を作付けし、子実を原料としてバイオエタノールを生成する)を作成し、現状Aと比較する(図1)。結果として、シナリオAで消費されるエネルギーや支出が産出可能なエネルギーや収入を上回り、シナリオAの各ステージで、さらなる省エネルギー・低コスト化技術の適用が必要であることが示される(表2)。
- 同様に千葉県香取市を事例として、家畜ふん尿の適切な利用や耕畜連携を図るシナリオB(市内で発生する乳牛ふん尿の約30%をメタン発酵し、ガス発電と消化液の生成を行う)を作成し、現状Bとの比較を行う(図1)。「生成物の運搬・散布」、「生成物の利用」のステージについてもエネルギー等を試算し、比較評価する。比較評価例Bでは、シナリオBのエネルギー消費量が現状Bよりも小さく、GHG排出量も少ないこと、経済性に関しては現状Bが有利な結果となり、シナリオBのステージ2、3での低コスト化や高付加価値化等が必要なことが示される(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- バイオマス利活用に伴う環境影響評価や経済性評価を専門とする研究者、バイオマス関連の行政施策担当者にとってもバイオマス利活用シナリオによる影響や課題を明らかにすることができる。
- 施設や機械等の建設・製造に関わるエネルギーやコスト等は評価の対象としていない。
- GHG排出量のうち、CH4、N2Oについては、「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令」の排出係数一覧表で参照できるもののみを算出対象とする。
- 設定するシナリオの前提条件は、評価結果の利用目的で、精密さが必要な場合がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
温暖化対策
高付加価値
コスト
省エネ・低コスト化
水田
多収米
低コスト
乳牛
評価法
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