タイトル |
感受性増強剤を利用した抗生物質耐性選抜による新規麹菌形質転換系 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
鈴木 聡
多田功生
福岡真里
竹谷博子
塚越芳樹
松下真由美
小田康介
楠本憲一
柏木 豊
杉山政則
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発行年度 |
2009 |
要約 |
麹菌は多くの抗生物質に耐性のため、抗生物質耐性選抜による形質転換は困難であるが、感受性増強剤併用による新規ブレオマイシン耐性選抜形質転換系を開発した。本技術は栄養要求性を持たない野生株の遺伝子組換えに利用できる。
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キーワード |
麹菌、薬剤耐性、形質転換、ブレオマイシン、感受性増強剤
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背景・ねらい |
日本醸造学会より「国菌」と認定され、麹菌として利用されるAspergillus oryzaeは日本の醸造産業において重要な産業微生物であるが、多くの抗生物質に対して耐性を示すため、利用可能な抗生物質耐性マーカーは極めて限られており、形質転換実験を用いた研究の障害となっている。 本研究は、A. oryzaeの遺伝子研究において必須の技術である形質転換における新規抗生物質耐性選抜系の開発を目指す新たな視点として、抗生物質感受性を増強する薬剤(抗生物質感受性増強剤)の効果を検証する。次に、それらを利用することにより従来利用困難であったブレオマイシン耐性マ―カーによる形質転換系を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- A. oryzaeのブレオマイシン感受性増強剤として、ブレオマイシンの細胞膜透過性を増大させる界面活性剤と、その菌体内からの排出を阻害するATP-binding cassette(ABC)排出ポンプ阻害剤を投与することを特徴とする。
- 界面活性剤Triton X-100及び、ABC排出ポンプ阻害剤クロルプロマジンを培地に添加すると、A. oryzaeのブレオマイシン感受性が顕著に増強する(図1)。
- 形質転換によりA. oryzaeにブレオマイシン耐性遺伝子を導入すると、同遺伝子を保持するA. oryzaeのみがブレオマイシン耐性を示してコロニーを形成する(図2A)。
- ブレオマイシン耐性遺伝子を選抜マーカーとして利用した形質転換系にて外来酵素遺伝子をA. oryzaeへ導入し、ブレオマイシン耐性を有するコロニーを選抜することで、当該酵素遺伝子を保持するA. oryzaeを選抜できる(図2B)。
- 外来酵素遺伝子導入株は、宿主株に対して有意に高い酵素活性を示す(図2C)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究成果はA. oryzae遺伝子研究を実施している醸造メーカー研究所を含む国内外の研究機関、大学等において活用できる。
- 既存の栄養要求性の選抜マーカー遺伝子と異なり、本成果のブレオマイシン耐性マーカー遺伝子はA. oryzaeゲノム内にほとんど相同な領域を持たないため、A. oryzae遺伝子のジーンターゲッティングによる破壊実験に用いる選抜マーカー遺伝子として最適である。
- 本研究成果により薬剤耐性優性選択マーカーが利用可能となるため、あらかじめ宿主菌株に栄養要求性を付与する必要がなく、簡便な形質転換を可能とする。
- 本研究成果によるA. oryzaeの抗生物質に対する感受性の上昇は、増感剤存在下における一過性の現象であり、A. oryzaeの性状になんら影響を与えるものではない。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
薬剤
薬剤耐性
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