リンゴ農薬50%削減のための農協部会組織による集団的防除マネジメントシステム

タイトル リンゴ農薬50%削減のための農協部会組織による集団的防除マネジメントシステム
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2008~2009
研究担当者 長谷川啓哉
高梨祐明
発行年度 2009
要約 リンゴ作において特別栽培に必要な農薬50%削減技術を産地単位で導入するには、農家が主体となって地域的、恒常的に病虫害を制御する集団的防除マネジメントが求められる。その導入には、従来と異なる部会組織および共同防除体制の整備が必要である。
キーワード リンゴ農薬50%削減技術、農協部会組織、集団的防除マネジメント
背景・ねらい 特別栽培認証を受けるためには農薬の成分回数を、地域の一般的な防除(通常、県の指導要項が定める防除)に対して半分に抑制しなければならない。しかし、50%削減ではキーテクノロジーとして導入を進めているフェロモン剤の対象外害虫であるハダニなどが多発しやすく、登録条件を達成できない園地も生じている。また、産地単位で特別栽培を導入するには、地域的に、恒常的に病虫害を制御しなければならないが、多くの産地では、共同防除組織と連携しながらも営農指導員主体で防除暦が策定され、後はカレンダー散布する程度が実情である。ましてや共同防除が販売戦略に活用された事例はほとんどない。本研究では、産地単位で特別栽培を導入するために、農家が主体となって地域的、恒常的に病虫害を制御する方式を集団的防除マネジメントと名付け、事例に基づきその具体的内容を示す。
成果の内容・特徴
  1. フェロモン剤対象害虫に対処するためには、地区を二分割して交互に農薬50%削減防除を実施することにより、一年おきに一般防除と交代する地域ローテーション制が有効である。事例産地では、50%削減防除の導入後3年目頃からハダニが多発したため、それ以降、産地をおよそ半分に分けて50%削減防除と農協の慣行防除(県の指導要項から2割程度成分回数を減らした防除)を交互に実施し、効果を上げている(図1)。
  2. 農薬50%削減技術で病虫害を制御するには、カレンダー散布から発生予察にもとづく状況対応的方式へ転換し、また、産地全体で取り組むには集団的方式を採用する。事例産地では年間10回ある散布時期ごとに、(1)地区ごとの病虫害発生状況を調査し、(2)集計して予察会議で審議し、(3)防除暦を修正して散布方針を決定し、(4)この方針に沿って各地区で散布している(図2)。
  3. 特別栽培を販売戦略の一環として実施する場合、このような防除のため組織を、販売組織である農協部会組織の内部に設置する。事例産地では、農薬削減を共販の販売戦略として取り組むために、集団的防除マネジメント組織である防除委員会は、部会組織の傘下におかれ、年間防除の計画・評価、および予察と散布方針の決定を担っている(図3)。
  4. 防除の意思決定を、産地の全農家まで行き渡らせるには、共同防除の組織体制を整備し、かつそれを部会組織の傘下におくことが有効である。事例産地では、産地内の兼業農家、高齢農家をカバーする全体の体制が整備され、各地区の共同防除組織は集団的防除マネジメント組織の傘下におかれている(図3)。
  5. このような体制は有効に機能しており、事例産地では2008年で5回、2006年で6回防除を変更している(表1)。そこでは、発生予察に基づき、発生が見られない病虫害は散布を見送るとともに、発生が著しい病虫害は追加散布をしている。以上のような集団的防除マネジメントにより、特別栽培は維持され、近年は特別栽培面積率が上昇している(図1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究成果は、特別栽培に取り組むにあたり、整備すべき組織的条件、構築すべき管理手法として、農協等産地主体の参考になる。
  2. 本システムが導入できるのは、共同防除組織や農薬調合組織が地域的に展開している産地である。
図表1 234083-1.png
図表2 234083-2.png
図表3 234083-3.png
図表4 234083-4.png
カテゴリ 病害虫 害虫 農薬 フェロモン 防除 りんご

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