発芽小麦種子プロテアーゼによる小麦グリアジン・グルテニンのエピトープ分解

タイトル 発芽小麦種子プロテアーゼによる小麦グリアジン・グルテニンのエピトープ分解
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2006~2009
研究担当者 老田 茂
林 高見
亀山眞由美
発行年度 2009
要約 発芽小麦種子プロテアーゼは、小麦アレルゲンタンパク質であるグリアジンやグルテニンの、アトピー性皮膚炎に関わるエピトープ(ヒトIgE抗体が結合するアミノ酸配列)を分解できる。
キーワード 小麦アレルギー、発芽小麦、プロテアーゼ、エピトープ分解
背景・ねらい 日本における食品アレルギー患者の約10%が小麦アレルギーであるため、その発症リスク低減が求められている。小麦アレルゲンタンパク質であるグリアジンやグルテニンが、発芽小麦種子プロテアーゼによって分解されることは知られているが、その分解パターンやアレルギー反応性の低下の程度は不明である。そこで、発芽小麦の有効利用を目的として、グリアジンやグルテニンのエピトープに対する、発芽小麦プロテアーゼによる分解性を、合成エピトープペプチドを基質に用い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やマススペクトル(MS)分析で明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 25℃で4日間発芽させた小麦種子から、DEAEイオン交換カラムにより粗精製されるプロテアーゼは、システインプロテアーゼ(Z-F-R-MCA分解)活性とセリンプロテアーゼ(Z-G-G- R-MCA分解)活性を両方含み、アトピー性皮膚炎に関わるグリアジンのエピトープであるPQQPFとQQPFPの合成ペプチドをいずれも90%以上分解する(表1)。
  2. 発芽小麦プロテアーゼは、PQQPFとQQPFPが重なったPQQPFPも80%分解可能で(表1)、PQQPFとQQPFPの副生も少ない(図1)。
  3. アトピー性皮膚炎に関わるグルテニンのエピトープQQQPPは比較的分解され難いが、そのエピトープを反復して含むペプチドCSQQQQPPFSQQQPPF(Glu-16)は分解され易い(表1)。Glu-16酵素分解物のMSおよびMS/MS分析により、エピトープ活性がない部分分解ペプチド(QQPP、QQPPF)が同定され、含エピトープペプチドの分解過程を確認できる(図2)。
  4. 運動誘発性アナフィラキシーに関わるω-5グリアジンのエピトープQQFPQQQおよびHMWグルテニンのエピトープQQPGQGQQも、発芽小麦プロテアーゼによって完全分解できるが、もう一つのω-5グリアジンのエピトープであるQQIPQQQは比較的分解され難い(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. グリアジンやグルテニンが分解されると、グルテンが形成されないため、パンや麺の製造は難しいが、デンプンが分解されていなければ、クッキー等の菓子類の製造は可能であり、本成果は、発芽小麦を用いた低アレルゲン化菓子類の開発に活用できる。
  2. 合成エピトープペプチドと各種プロテアーゼの反応液をHPLCやMSで分析する方法は、他のアレルゲンタンパク質の分解解析にも応用できる。
図表1 234090-1.png
図表2 234090-2.png
図表3 234090-3.png
図表4 234090-4.png
カテゴリ 小麦

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