タイトル |
地球温暖化気候シナリオを組み込んだ気候緩和機能評価モデル |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2008~2009 |
研究担当者 |
佐々木華織
田中博春
菅野洋光
井上君夫
足立幸穂
吉川 実
後藤伸寿
大原源二
中園江
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発行年度 |
2009 |
要約 |
気候緩和機能評価モデルに、IPCCにより策定されたA1B排出シナリオに基づいた2030年代と2070年代の気候予測データ(MIROC)を組み込み、気温や降水量、風の将来変化を3kmメッシュで再現できるようにした。
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キーワード |
気候緩和機能評価モデル、地球温暖化予測、土地利用改変、GUI
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背景・ねらい |
地球温暖化による気候変動により、農作物の栽培適地移動や栽培不適地の拡大、夏季の高温による人々の健康被害等、多くの好ましくない事例が報告されている。特に都市化に伴い拡大するヒートアイランドは、温暖化でより高温になり、人的被害をさらに助長する可能性があるため、将来の気候変化を見据えた都市・農地の開発計画が必要である。そこで、農研機構が開発した「気候緩和機能評価モデル」に、気候シナリオにもとづいた将来気候下でも局地気象シミュレーションができる機能を組み込み、地球温暖化による将来気候下で農地・草地等の気候緩和機能を評価できるようにする。
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成果の内容・特徴 |
- 中央農研にて開発された「気候緩和機能評価モデル」に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)により策定されたA1B排出シナリオに基づいた予測データ(大気海洋結合モデルMIROC)を組み込み、将来気候下で局地気象シミュレーションを行うことで、気温や降水量の変化を3kmメッシュで再現できるようにした。計算から結果出力まで、すべての操作がWindows XP搭載のPCのGUI操作にて可能である。計算可能な期間は、1982~2004年の現在気候、および2030年代と2070年代の将来気候である。
- 現在気候の計算例として、仙台平野を中心とした領域における2004年8月1~15日の日平均気温分布を示す(図1)。局地気象シミュレーションにより、日平均気温25℃以上の高温域が仙台平野の広い範囲に分布していることが把握できる。
- 同じ期間における2030年代の気温を計算すると、仙台市を中心とした付近などに27℃以上の高温域が形成されている。また、海岸部では海風の進入によると思われる低温域が形成されている(図2)。
- 2004年と2030年代の気温差を計算すると、仙台市から東に高温域がのびている特徴的な分布が把握できる(図3)。地球温暖化による昇温が、地域的に一様なものではなく、局地的な分布特性を持つことが示唆される。
- 2030年代の気候条件下で、仙台市の土地利用で都市の部分を水田と畑地に変更し、土地利用変更前後の気温差を比較した (図4)。仙台市街域では土地利用変更により気温が0.6℃以上、中心部では1℃以上、相対的に低下すると予測された。このように、ユーザー側で土地利用の変更を行うことで、現在から将来における農地の持つ気候緩和効果が予測できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 気象シミュレーションを行うにあたり、短時間の計算では不確定要素が大きくなるので、少なくとも10日以上の連続した計算から解釈を行うことが望ましい。また、将来の気候予測データは、それ自体不確定要素が大きく、計算結果の解釈にあたっては、それらについても考慮する必要がある。
- 本気候緩和モデルの使用にあたっては、利用申請受付の後、500GB以上の容量のハードディスクを郵送してもらい、プログラム・データを無償配布する。
- 本気候緩和モデルは、日本国内の身近な地域における将来の気候変化を予測するツールとして最適であり、大学や研究機関、中学校・高等学校での教育等で、大いに利用されると期待できる。
- PCのOSがWindows VistaまたはWindows 7の場合は、基本的な動作は行えるが、GUIで操作しきれない箇所があるので、事前にご相談いただきたい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
水田
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