タイトル |
豚の産子数における選抜指標は総産子数よりも生存産子数のほうが効率的である |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
佐藤正寛
佐々木修
石井和雄
西浦明子
|
発行年度 |
2010 |
要約 |
豚における生存産子数の選抜は総産子数(生存産子数と死産数の和)の 選抜に較べて、選抜反応が大きく、遺伝的パラメーターの偏りの影響も小さいため、産子数を効率的に育種改良するための選抜指標として適している。
|
キーワード |
総産子数、生存産子数、死産数、選抜形質、遺伝率、遺伝相関、豚
|
背景・ねらい |
豚における産子数の改良には、総産子数を選抜する方法と生存産子数を選抜する方法が用いられており、その得失は不明確である。そこで、両者の遺伝的特性を明らかにし、産子数をより効率的に育種改良するための指標を明確にする。
|
成果の内容・特徴 |
- 雌系であるランドレース種および大ヨークシャー種において、これまでに公表されている総産子数の遺伝率は、生存産子数のそれよりも僅かに高く推定される傾向にある。しかし、死産数にも遺伝性が認められており、総産子数と死産数の遺伝相関は非常に高いが、生存産子数と死産数との間に遺伝的な関係は認められていない(表1)。
- 総産子数または生存産子数を指標として、家系選抜指数により算出した生存産子数の遺伝的改良量の期待値は、総産子数よりも生存産子数のほうが高くなる。この傾向は、種雄豚に交配する雌豚の頭数や一腹から育成される雌豚の頭数が増加するほど顕著になる。
- 総産子数、生存産子数または生存産子数と死産数の組み合わせを指標として、コンピュータシミュレーションを用いて10世代の選抜を実施すると、生存産子数と死産数の組み合わせによる総合育種価のBLUPを指標とした選抜が最も高い反応を示す(図1)。
- 当該集団の遺伝的パラメーターが、表1に示した値よりも遺伝率で±0.05、遺伝相関で±0.1の範囲で異なっていても、多くの場合、総産子数よりも生存産子数による選抜のほうが、遺伝的改良量の期待値は高くなる。
- 選抜に用いる遺伝的パラメーターに偏りのある場合でも、生存産子数の選抜反応にはパラメーターの偏りによる影響はみられない(表2)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 豚における産子数の改良の指標として生存産子数を用いることにより、豚の繁殖性の育種改良に活用できる。
- 豚の生産性を高めるためには、最終的に生存産子数よりも離乳頭数を改良すべきだが、豚では多くの場合里子が行われるため、離乳頭数を選抜の指標にして母豚を選抜することは難しい。そのため、豚育種集団において、子豚の生産性における遺伝的能力を高めるためには、生存産子数を指標にすることが望ましい。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
育種
繁殖性改善
豚
|