タイトル |
黒毛和種肥育素牛の育成に適した小規模移動放牧方式 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
手島茂樹
池田哲也
進藤和政
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発行年度 |
2010 |
要約 |
寒地型牧草を利用した小規模移動放牧方式により、30aの圃場で、春から夏までは3頭、夏から秋までは2頭の黒毛和種肥育素牛を放牧することができ、補助飼料無給与で全期間平均0.69kg/日の日増体量を得ることができる。
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キーワード |
小規模移動放牧、黒毛和種、肥育素牛、寒地型牧草、耕作放棄地
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背景・ねらい |
小規模移動放牧を利用した肉用繁殖牛の放牧は、西日本を始め東日本にも増加しつつある。しかし中山間地の耕作放棄地は依然として増え続けており、農地保全のための放牧利用の需要が高まっている。そこで、小規模移動放牧の活用場面をさらに広げるため、黒毛和種肥育素牛の育成を可能とする小規模移動放牧方式を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 育成牛を対象とした小規模移動放牧方式では、肥育素牛3頭当たりペレニアルライグラス等の寒地型牧草を導入した耕作放棄地を30aほど準備し、この草地を15aほどの2牧区に分割し、1つの牧区に約1週間ずつ滞牧させる2牧区輪換放牧とする。
- 4月末から5月上旬の、草地の草高が約10~20cmの時に黒毛和種肥育素牛3頭(入牧時4~8ヶ月齢)を入牧させ、牧草の生長が落ちてきた7月下旬に、最も体重の重い1頭を退牧させる。すべての放牧牛を退牧させるのは、草地の草量が減少し、草高が10cm以下となる10月中旬から11月上旬である。放牧期間中の補助飼料は無給与である。
- 放牧牛の体重の推移は、入牧後5月から6月にかけては良好な増体であるが、その後徐々に増加速度が低くなる(図1)。放牧期間を3期に分けた供試牛の日増体量(DG)は、前期が0.90kg/日と高い値であるが、中期以降(6月下旬以降)は0.61~0.57kg/日となる。全期間平均は0.69 kg/日である(表1)。
- 9~12ヶ月齢で放牧終了後、肥育農家で退牧した牛の肥育を実施すると、約26ヶ月齢で出荷することができ、A3~A5の牛肉の格付けを得ることができる(表2)。放牧終了後、出荷時までの日増体量(DG)の平均(5頭)は0.99kg/日である。
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成果の活用面・留意点 |
- 長野県北佐久郡御代田町の試験地(標高約900m)で放牧を実施した結果であり、同等な気象条件の地域で活用できる。
(参考)畜産草地研究所御代田研究拠点:標高約1050m、年平均気温8.3℃、年平均降水量1031mm - 施肥は、窒素換算で10a当たり3kgずつを、6月下旬から7月上旬と、8月下旬から9月上旬にそれぞれ転牧直後に施用する(窒素換算で合計6kg)。
- 放牧牛を入牧させる前に、生草、電気牧柵、屋外の環境に慣れさせる放牧馴致が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
寒地
出荷調整
施肥
中山間地域
肉牛
繁殖性改善
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