雄牛の精子形成過程におけるエピジェネティックなリプログラミング

タイトル 雄牛の精子形成過程におけるエピジェネティックなリプログラミング
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2009~2010
研究担当者 金田正弘
渡辺伸也
赤木悟史
原口清輝
ソムファイタマス
発行年度 2010
要約 精子形成過程におけるDNAメチル化状態を解析したところ、OCT4NANOGなど初期発生に必須の遺伝子は成熟精子ですでに脱メチル化されており、これらの遺伝子のリプログラミングは受精後の発生をサポートするための機構であると考えられる。
キーワード 精子形成、エピジェネティクス、DNAメチル化、リプログラミング
背景・ねらい 哺乳類の生殖細胞形成過程では、減数分裂・相同組換えというゲノム(遺伝子)のシャッフリングが行われることで、次世代の遺伝的多様性が確保される。と同時に、遺伝子発現を制御するゲノムの修飾機構であるエピジェネティクスもダイナミックに変化し、リプログラミングが起こることが知られている。このような研究はこれまでもっぱら実験動物(マウス)を用いて行われてきており、家畜においても同様なリプログラミング機構が存在するかどうか実験的に確認した研究は少ない。そこで、マウスで初期発生に必須な遺伝子であるOCT4NANOGおよび雌個体でX染色体不活化に必須なXIST遺伝子のDNAメチル化状態を、雄牛の体細胞(末梢白血球)および精子を用いて分析し、家畜におけるエピジェネティックなリプログラミング機構の解析を行う。
成果の内容・特徴
  1. 新鮮射出精子(雄牛#1~2)と凍結精子(雄牛#3~8)を用い、各遺伝子のメチル化レベルを1塩基レベル(哺乳類では主にCG配列のシトシンのみがメチル化される)で解析した結果では、図1に示すように、体細胞(末梢白血球)ではいずれの領域も高度にメチル化されている(●が多い)が、精子ではほぼ完全に脱メチル化されている(○が多い)。
  2. 黒毛和種・褐色和種・ホルスタイン種での品種間における差は、観察されていない。個体間でのバラツキは多少あるものの、図2に示すとおり、いずれの遺伝子も精子形成過程において脱メチル化されることが分かる。
成果の活用面・留意点
  1. これらの遺伝子のメチル化状態に異常がある場合、発生が正常に進まないことが考えられることから、不妊症の診断に用いることができる可能性がある。
  2. OCT4NANOG遺伝子はいずれも初期発生時に発現する多能性関連遺伝子であり、またX染色体を持つ精子由来の受精卵は全てメスになるため、XIST遺伝子も受精後の胚発生過程において発現されなければならない。このような背景を考慮すれば、雄牛の精子形成過程におけるこれらの遺伝子の脱メチル化(エピジェネティックなリプログラミング機構)が、受精成立後の正常な初期発生をサポートしているものと考えられる。
図表1 234529-1.png
図表2 234529-2.png
カテゴリ 品種

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