タイトル |
越流水膜の振動による低周波騒音の低減対策工 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2008~2010 |
研究担当者 |
髙木強治
後藤眞宏
浪平 篤
関谷 明
峯岸雄一
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発行年度 |
2010 |
要約 |
高さ2m程度の比較的低落差の越流堰において、越流水深10cm以下の小規模な落水により水膜から発生する低周波騒音を低減する対策工であり、人体が感じやすい低周波騒音の音圧レベルを約20dB低減できる。
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キーワード |
落水音、水膜振動、低周波騒音、G特性、音圧レベル
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背景・ねらい |
越流堰や落差工などの周辺では、水膜振動による低周波騒音の発生が古くから知られている。低周波騒音は、家具や建具の振動などの物的問題、不眠や不快感などの生理的問題により、その対策が必要となることも少なくない。しかし、比較的低落差の越流堰で、越流水深が小さな水理条件に対しては、低周波騒音の実態把握や対策の検討は十分とは言えない。そこで、越流堰における落水音の特徴を室内実験により明らかにし、水膜振動を防止して低周波騒音を低減する対策工を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 国営頭首工に多く見られる規模の落差2mの越流堰(幅1.77m)で室内実験を行う。越流水深1~4cmでは、水深の増加に伴い周波数10~1000Hzの音圧レベルが大きく上昇する(図1(a))。越流水深が5cmを越えると、当該領域の音圧レベルが低下して水深による影響は小さくなる(図1(b))。いずれの水理条件でも、100Hz以下の低周波領域に音圧レベルのピークがある(図1)。
- 低周波騒音の低減には、水膜背面の閉空間解放(図2(a);実証試験)による水膜の安定化が有効とされているが、実際にはその効果が不十分な場合が多い。これは水膜下方の振動が、低周波騒音の一因となっているからである。よって、その低減対策としては水膜を小さく分断するだけでなく、水膜の形成そのものを阻害することが必要である。
- 対策工は樋型の形状で(図2(b);実証試験)、その特徴は、1)越流水を複数の水流の束として水膜を発生させない、2)越流部の下方に取り付けることにより、越流部の機能や越流係数等に影響しない、3)堰の越流機能に影響を与えないので、設置基数を任意に設定できる、4)既存の堰でも後付で容易に設置が可能である、と整理できる。
- 越流堰からの水膜振動に起因する低周波騒音の低減には、幅25cm程度の樋型対策工の設置が効果的である。G特性値(低周波騒音が人体感覚に与える影響を評価する指標値)については、特に音圧レベルが高い越流水深2~4cmで20~30dB、それを越えても20dB程度の低減効果がある(図3)。また、越流水深4cmでもっとも顕著であった、100Hz以下の低周波領域における音圧レベルのピークも、十分に低下させることができる(図4)。ただし、可聴音域の騒音に対する低減効果はない。
- 既存の頭首工土砂吐ゲート(幅2m,高さ1.5m)に対する現地実証試験(図2)においても、G特性値については約20dBの低減が達成される。よって、室内実験の結果と同様に、対策工は現地においても低周波騒音の低減に大きな効果が期待される。
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成果の活用面・留意点 |
- 成果の受け渡し先は、落水の騒音問題を抱える越流式のゲート、堰等を管理する国、地方自治体、土地改良区等である。
- 本研究で提案した対策工は、高さ2m程度の比較的低落差の越流堰で、越流水深10cm以下の小規模越流時に発生する低周波騒音を対象としたものである。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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