長期間の実測と温暖化実験にみる北陸の豪雨強度の変化特性

タイトル 長期間の実測と温暖化実験にみる北陸の豪雨強度の変化特性
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2008~2010
研究担当者 皆川裕樹
増本隆夫
吉本周平
土原健雄
石田 聡
発行年度 2010
要約 近年、北陸において豪雨時の降雨パターンに変化がみられ、最大6時間雨量ではその強度が大きくなる傾向がみられる。さらに、大気大循環モデルの降雨データを用いて推定された将来の10年確率3日雨量は、現在と比べて増加すると予測される。
キーワード 気候変動、豪雨、GCM、確率雨量
背景・ねらい 地球温暖化に伴う気候変動の影響で、将来的に極端な豪雨の発生やそれによる大規模な洪水・浸水被害等のリスクの増加が懸念されており、特に低平地域では適切な対策が望まれている。一方、農地を対象とする排水計画では10年確率程度の雨量を計画降雨として用いるが、これまでに気候変動の影響は考慮されていない。これらの影響を評価し、その後に対策を検討するには、降雨の変化傾向の把握が重要である。ここでは、低平地域である石川県加賀三湖地区の近傍に位置する金沢周辺を対象とし、過去から現在までに観測された長期間(約70年間)の降雨データおよび大気大循環モデル(GCM:General Circulation Model)による将来の予測降雨データの中で特に豪雨に注目し、その強度変化傾向について分析する。また、気候変動に伴う影響評価および対策に対するシナリオの指標化に向けて、計画降雨に用いる確率雨量の変化の度合を推定する。
成果の内容・特徴
  1. 長期間の降雨データ(表1(a))より、豪雨の強度変化に注目するため、日雨量に豪雨選定の閾値を設け条件を満たす3日雨量を豪雨イベントとして抽出する。抽出した豪雨イベントは時間雨量単位で分析する。ここではデータ期間を過去から現在までA~Cの3期間に分割し、期間毎の分析結果を比較することで、豪雨時の降雨パターンの変化傾向を把握する。
  2. この地区では、条件を満たす豪雨の発生回数には明確な増加傾向は見られない。しかし、雨量の平均値はやや増加しており、例えば短時間雨量の指標として豪雨中の最大6時間雨量の平均値をみると、C期はA期と比べ約8%増加している。さらにその発生分布が変化し、C期ではピークが大きい方に移動していることから(図1)、この地区では豪雨時の雨量がやや増加し、さらに集中化している傾向がみられる。
  3. GCMデータ(表1(b))について、実測値と比較し誤差を補正する。データは対象とする地区付近を切り出し、現在~将来の各期間で年最大3日雨量を抽出しGumbel分布により確率3日雨量を求める。GCMによる現在と、同期間の実測より求めた値を比較することで確率年毎の補正係数を得る(表2)。補正係数を各期間の確率雨量にそれぞれ乗じることで、対象地区付近で将来予測される確率雨量を得ることができる。
  4. 補正された現在~将来の確率3日雨量をみると(図2)、将来的に確率雨量は増加することが予測される。特に排水計画で用いられる10年確率に注目すると、この地区では近未来で最大となり、現在に比べ50mm程度増加(約1.23倍)すると推定される。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果に示す一連の方法は他の地区にも適用可能であり、豪雨をインプットとする各分野において、気候変動の影響評価及び対策に向けたシナリオの指標化に役立つ。
  2. 本結果は1地域の豪雨の特徴を示すものであり、地域によりその傾向は異なる。また、GCMデータに関してはモデルの種類やCO2排出シナリオによって結果や傾向が異なるため、検討の際には用いるデータの特徴を十分に把握する必要がある。
図表1 234582-1.png
図表2 234582-2.png
図表3 234582-3.png
図表4 234582-4.png
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