中山間地域における他出子弟の実家支援意向

タイトル 中山間地域における他出子弟の実家支援意向
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2008~2010
研究担当者 芦田敏文
遠藤和子
福与徳文
発行年度 2010
要約 実家の耕作放棄を防止するための支援として、他出子弟は、農作業手伝いを選び、金銭支援を避ける傾向がある。経営主の子以外、県外居住の他出子弟は農作業手伝いを避ける傾向があり、あとつぎの他出子弟は、高額な金銭支援を選ぶ傾向がある。
キーワード 他出子弟、中山間地域、耕作放棄、農作業手伝い、金銭支援
背景・ねらい 今後、中山間地域では、さらなる高齢化の進行が見込まれることから、営農継続が困難な状況に陥る農家が多数発生し、さらなる耕作放棄地の拡大が危惧されている。とくに農地集積による大規模経営の展開が困難な急傾斜地では、個々の農家単位により農業が継続している。その際、単身世帯農家や高齢一世代世帯農家に代表される家族構成員が極めて少ない農家では、他出子弟の支援がきわめて大きな役割を果たしている。上記の条件に該当する中国中山間地域の水田集落を対象として、他出子弟の実家支援意向を分析することによって、耕作放棄地の防止・解消に向けた人的資源としての活用可能性を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 当集落の他出子弟の居住地は、同一市内44%、同一県内89%である。農家の80%で1人以上の他出子弟の農作業手伝いがあり、他出子弟側からみるとその50%が実家の農作業手伝いに従事している(図1)。
  2. 稲作作業別には、収穫・乾燥調整、播種・育苗、田植えという一般的にも臨時労働力の従事が多い作業における農作業手伝い実施率が高いほか、急傾斜地という地理的条件から畦畔草刈り作業における農作業手伝い実施率が次いで高い。一方、農作業手伝いと比較して、金銭支援の実施率は低い(図1)。
  3. コンジョイント分析(図2)の結果、他出子弟は、実家の耕作放棄を回避するためには何らかの支援を行うことを望んでいることから、耕作放棄地の防止・解消に向けた人的資源としての活用可能性がある(図3)。
  4. 支援内容として農作業手伝いと金銭支援の2つを想定すると、他出子弟は、より多くの回数の農作業手伝いを選ぶ傾向があり、金銭支援、とくに高額な金銭支援については避ける傾向がある(図3)。
  5. 他出子弟の属性は、支援意向に影響を及ぼしている。経営主との続柄が子以外(兄弟姉妹等)、あるいは県外居住の他出子弟は農作業手伝いによる支援を避ける傾向がある。また、子のなかでもあとつぎは、高額な金銭支援も選ぶ傾向がある(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で明らかになった他出子弟の実家の農作業手伝いに対する肯定的な意向から、他出子弟を耕作放棄地防止・解消の人的資源として積極的に位置づけた実践と、そのための諸条件の解明や促進手法の開発が、今後の研究展開において期待される。
  2. 他出子弟側へのアンケートでは、実家との関わりが薄い他出子弟の回答率が低くなることに留意が必要である。
  3. 営農活動に必要な単位面積あたり労働量が大きい急傾斜地の中山間地域での知見であるため、大区画・平坦地域における成果援用にあたっては、農作業手伝いの作業量と作業種類の差に留意が必要である。
図表1 234600-1.png
図表2 234600-2.png
図表3 234600-3.png
カテゴリ 育苗 乾燥 経営管理 傾斜地 水田 大規模経営 中山間地域 播種

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