タイトル |
農業の総合的な生産性向上に対する影響要因 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2009~2010 |
研究担当者 |
國光洋二
鬼丸竜治
合崎英男
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発行年度 |
2010 |
要約 |
生産性の総合評価指標である全要素生産性は、農業全体及び稲作において、時系列的に上昇している。この上昇に対し、農業経営規模拡大による規模の経済、大区画圃場のような農業基盤資本及び研究開発の蓄積による知識資本が貢献している。
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キーワード |
全要素生産性、経営規模拡大、農業基盤資本、研究開発、知識資本
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背景・ねらい |
人口減少傾向が強まる中で日本経済の成長を維持するため、各産業のより一層の生産性向上が重要である。農業においても技術革新や規模の経済性の発現により、総合的な生産性を表す全要素生産性(同じ労働、資本、肥料等の投入でも、より多くの生産額を得られるような技術進歩による生産性指標)の向上が不可欠である。本研究は、労働と農業機械の代替を促進する偏向的技術進歩を考慮して農業全体と稲作の全要素生産性を定量化し、その変化に対する(1)経営規模の拡大による規模の経済、(2)農業水利施設や大区画圃場のような農業基盤資本、(3)国全体の研究開発投資による知識資本の貢献を定量的に示す。
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成果の内容・特徴 |
- 農業全体及び稲作ともに、程度は異なるものの1960年代から2000年代にかけて全要素生産性が上昇し、同じ労働、資本、肥料等の投入でもより多くの生産額を得られるようになっている(図1)。
- 全要素生産性の上昇に対し、一般的に言われている規模の経済性、社会資本の蓄積、技術開発の影響を、農業分野の指標として経営規模(農家1戸当たりの平均農地面積)、農業基盤資本(農業農村整備事業の耐用年数期間にわたる投資額の累積額)及び知識資本(日本全体の研究開発投資額から効果発現までのタイムラグと陳腐化率を考慮して推計した金額)の水準によってとらえると、これら3要因がいずれも全要素生産性の上昇に統計的に有意にプラスに影響する結果となる(表1)。したがって、農業経営規模の拡大が1%進めば、全要素生産性は農業全体で0.87%、稲作で0.32%上昇し、農業基盤資本あるいは知識資本の水準が1%増加すれば、全要素生産性は農業全体で0.037%、稲作の場合で0.067%上昇する。
- 影響要因の貢献度を年代別に見ると(図2、図3)、農業全体、稲作ともに、1960~70年代には、農業基盤資本や知識資本の貢献が大きい。稲作では、生産費調査のデータ上、戸当たりの作付面積が減少しているのでマイナスの寄与である。一方、2000年代では、効果そのものに変わりはないものの、財政の逼迫等の影響で、農業基盤資本や知識資本自体の伸びが減速し、全要素生産性の変化に対するこれら資本の影響(寄与度)が低下している。代わって規模拡大の寄与度が高まっている。
- 今後、農業生産性向上を加速するため、農地集積の促進等の経営規模拡大のための施策に加え、農業農村整備や研究開発投資による公的資本の蓄積、増加が重要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究の手法は、他の農作物の生産性に関する分析にも活用できる。
- 経営規模の影響率の中には、農業基盤整備が経営規模の拡大を通じた効果も想定されるが、ここでは考慮していないことに留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
規模拡大
経営管理
水管理
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