バガス炭化物の製造・農地施用によるCO2削減ポテンシャルの解析

タイトル バガス炭化物の製造・農地施用によるCO2削減ポテンシャルの解析
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2007~2011
研究担当者 亀山幸司
塩野隆弘
凌 祥之
東江幸優
古川昇
発行年度 2010
要約 バガス炭化物を製造し、農地施用する場合のCO2削減ポテンシャルを炭化プラントの稼働データ等を基に解析する。CO2削減ポテンシャル推定値に対して炭化物製造過程におけるCO2排出の寄与が大きく、前処理として原料含水率を低減することが重要である。
キーワード 炭化、さとうきびバガス、土壌改良、炭素貯留、LC-CO2
背景・ねらい バイオマスの利活用促進のため、さとうきびの絞りかすである「バガス」を炭化して、土壌改良資材として利用することを検討している。バイオマス由来の炭化物が農地施用される場合、炭素として土壌中に安定的に貯留され、大気中のCO2削減に寄与することが期待されている。しかし、その製造・輸送・農地施用の過程では、逆にCO2が排出される(図1)。このため、沖縄県宮古島市に設置されたパイロット炭化プラントの2ヶ年の稼働データ等を活用して、バガス炭化物を製造・農地施用する場合のライフサイクルでのCO2排出量(以下、LC-CO2)の解析を行い、炭化物の製造・輸送・農地施用の過程におけるCO2排出と炭化物による農地炭素貯留を考慮したCO2削減ポテンシャルを解析する。
成果の内容・特徴
  1. 炭化プラント(外熱式、連続型)の稼働データ(炭化温度500-700℃、原料含水率15-60%)の解析によれば、炭化物の製造過程で消費される灯油消費量は、炭化温度には殆ど依存せず、原料含水率に大きく依存する(図2)。また、炭化収率(原料に対して生成される炭化物の重量比)及び炭化物の炭素含有率は、与えられた炭化温度内では有意差がなく、ほぼ同一の平均値(炭化収率0.21、炭化物の炭素含有率70%)を示す。
  2. 炭化プラントの稼働データ等を用いて、バガス炭化物の製造・農地施用システム(図1)のLC-CO2解析を行う。バガス炭化物を製造・農地施用する場合のライフサイクルの中で、炭化物製造時における灯油消費が最もCO2排出の寄与が大きい(図3(a))。炭化物製造時の灯油消費は原料含水率に大きく依存するため(図2)、炭化の前処理として、原料含水率を十分に低減することが重要である。
  3. バガス炭化物の製造・農地施用によるCO2削減ポテンシャル推定値は、原料含水率が20、50%の場合で、それぞれ0.3、0.2t-CO2/t-乾物バガスである(図3(b))。
  4. 炭化収率、土壌中での炭化物の炭素残存率、炭化物の輸送距離に関して感度分析を行う。炭化収率、炭素残存率は、CO2削減ポテンシャル推定値に大きく影響する。一方、輸送距離の増加は、CO2削減ポテンシャル推定値にあまり影響しない(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. バイオマス関連の行政やバイオマス利活用に伴う環境影響評価に利用できる。
  2. 本解析においてシステム境界は、製糖工場においてバガスが排出されてからバガス炭化物として農地施用後10年目までとしている。また、比較対象の従前システムとして、バガスを直接的に農地施用するシステムを考慮している(農地施用されたバガスは10年間で100%分解されると仮定)。
  3. 本解析において炭素残存率は、炭化物が含有する炭素のうち75%が10年間土壌中に残存すると仮定している。これは、平均残存時間(農地施用後に炭化物が土壌中に残存する平均時間)で115年に相当する。既往研究では、平均残存時間は数百年から数千年と推定されており、バラツキが大きい。炭素残存率は、原料、炭化条件、土壌・気象条件等に依存すると考えられる。このパラメータに関しては、さらなる精査が必要である。
図表1 234604-1.png
図表2 234604-2.png
図表3 234604-3.png
図表4 234604-4.png
カテゴリ さとうきび 土壌改良 輸送

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる