タイトル |
耐寒性が優れ、競合力の穏やかな放牧用極小葉型シロクローバ品種「北海1号」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2001~2010 |
研究担当者 |
松村哲夫
奥村健治
高田寛之
廣井清貞
我有 満
磯部祥子
山川政明
牧野 司
佐藤尚親
林 拓
出口健三郎
大塚博志
岩渕 慶
安達美江子
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発行年度 |
2010 |
要約 |
耐寒性に優れるシロクローバ「北海1号」は、国内育成品種で初めての極小葉型で、競合力が穏やかなため、チモシーおよびメドウフェスクとの混播・短草利用でマメ科優占(過繁茂)のリスクが低く、イネ科牧草の密度を高く維持できる。
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キーワード |
シロクローバ、極小葉型、放牧利用、競合力、混播適性、耐寒性
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背景・ねらい |
シロクローバは、北海道の草地で基幹マメ科草種として利用されているが、集約放牧で短草利用する放牧地では、競合力の低いイネ科草種と混播した際に優占しやすく、シロクローバが優占した状態では、誇張症発症や蛋白過剰によるMUN(乳中尿素態窒素)値の上昇等が懸念され、放牧地の使用を躊躇する例がある。シロクローバ被度が30%程度に維持されることが理想であるが、既存品種では競合力が強く、安定したシロクローバ率の維持が難しい。そこで、土壌凍結地帯で放牧用主幹草種となっている、比較的競合力の弱いチモシー等との混播でもマメ科優占リスクが低く、越冬性に優れる小葉型品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- 「北海1号」は北海道農研と道総研根釧農試の両試験地において選抜された9親クローンの交配による合成品種である。
- 既存の小葉型標準品種「タホラ」より草丈、小葉長、小葉幅および個体の拡がりの小さい極小葉型品種である。ほふく茎数は、標準品種より多い(表1)。
- 耐寒性は「タホラ」の「中」に対して「強」、菌核病罹病程度は「タホラ」並(表1)。
- 道東でのチモシーとの混播、短草利用による合計乾物収量は、「タホラ」を100とした値で90とやや少ないが、イネ科牧草収量は同110と多い(図1)。シロクローバ被度の平均値は26%で、過繁茂傾向であった標準品種の46%より低い。シロクローバ被度の最大値は48%で「タホラ」の65%より低く、マメ科優占リスクが低い(表2)。
- 道東(根釧)でのメドウフェスクとの混播・短草利用による合計乾物収量は「タホラ」対比88で、イネ科牧草収量は同量であった(図1)。シロクローバ被度の平均値(道東・根釧)は37%で、過繁茂傾向であった「タホラ」の62%より低い。シロクローバ被度の最大値も「タホラ」より低く、マメ科優占リスクが低い(表2)。
- 混播・短草利用でのチモシーの茎密度は、全場所平均で「北海1号」が1876本/㎡、「タホラ」が1561本/㎡で、「北海1号」は草地密度を高く維持できる(表3)。メドウフェスクでは「タホラ」並かやや多い(表3)。イネ科茎密度は、高いほど雑草侵入などによる荒廃を防ぎ草地の永続性維持に有効であり、「北海1号」は、特にチモシーと混播・短草利用する際に「タホラ」より有利である。
- 放牧時の乾物利用率に大きな差はなく、放牧適性は「タホラ」並である。また、粗蛋白質含量は「タホラ」並、採種性も「タホラ」並である(表1)。
- 極小葉型であることに加え、葉斑が「タホラ」より鮮明で、花色はやや赤みが強く、外観からの品種の区別性が高い(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- チモシーまたはメドウフェスクとの混播で短草利用する。普及対象地域はチモシー、メドウフェスク主幹放牧地が利用される北海道東部で、想定普及面積は約4,000haである。
- 小葉型既存品種よりさらに小型であるため、採草利用、兼用利用には適さない。
- 種子の市販は、種子増殖後、2015年より開始の予定である。
- 平成22年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分シロクローバ新品種候補「北海1号」(普及奨励)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
雑草
新品種
耐寒性
品種
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