放牧牛乳に特徴的な揮発性成分

タイトル 放牧牛乳に特徴的な揮発性成分
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2006~2009
研究担当者 上田靖子
朝隈貞樹
秋山典昭
須藤賢司
松村哲夫
篠田 満
発行年度 2010
要約 放牧牛の生乳には生草由来の揮発性成分のひとつであるphyt-1-eneが多く含まれ、放牧時間の増加に伴って増加する。また、昼夜放牧開始時や終了時には3日程度で有意な量的変化を示し、ホモジナイズや超高温殺菌後も消失しない。
キーワード 放牧牛乳、揮発性成分、phyt-1-ene
背景・ねらい 北海道では牛乳生産に放牧を利用する農家が増加してきており、放牧による牛乳や乳製品の付加価値を高め、差別化を行うための科学的な指標が求められている。放牧牛乳は、β-カロテンや共役リノール酸などが豊富に含まれることが報告されているが、これらは放牧草以外の飼料中にも含まれることがあり、放牧牛乳の明確な判別指標とはならない。そこで、新たな判別指標となる物質を探すために、牛乳中に含まれる揮発性成分に着目し、放牧牛乳に特徴的な揮発性成分を検出するとともに飼養方法、放牧時間との関係、また放牧開始・終了時の変化やホモジナイズと超高温(UHT)殺菌の影響を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 放牧牛乳の揮発性成分を水蒸気蒸留法で抽出し、GC/MSおよびGCで分析すると、生草(クロロフィル)由来の成分であるジテルペノイド類が多く検出され(図1)、とくにphyt-1-eneが顕著に現れる。
  2. 牛乳中のphyt-1-eneの含量は1日の放牧時間の増加に伴って増加し、1日8時間かつ1週間以上の放牧で舎飼飼養の牛乳より有意(p<0.01)に高くなる(図2-(a))。
  3. 牛乳中のphyt-1-eneの含量は、放牧草の推定採食量と正の相関がある(図2-(b))。
  4. 舎飼と昼夜放牧飼養の切り替えに対し、牛乳中のphyt-1-eneの含量は速やかに反応し、どちらも切り替え3日後には切り替え前に対して有意な差(p<0.01)がある(図2-(c))。
  5. 市販乳を想定したホモジナイズと超高温(UHT)殺菌を行っても、牛乳中のphyt-1-eneは保たれる(図3)。
  6. 牛乳中のphyt-1-eneの濃度の差を用いると、1日8時間以上の放牧で1週間目以降、または昼夜放牧開始3日目以降において、舎飼時の牛乳と区別できる。
成果の活用面・留意点
  1. 生草由来の揮発性成分phyt-1-eneは放牧牛乳の判別指標として活用が期待できる。
  2. 本成果はメドウフェスクおよびペレニアルライグラス主体草地で放牧したときの結果である。
  3. 牛乳中のphyt-1-eneの分析については、さらに迅速かつ簡易測定法などの検討が必要である。
図表1 234676-1.png
図表2 234676-2.png
図表3 234676-3.png
カテゴリ 簡易測定

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